あの人が作ってくれた餃子はとてもおいしかった。すべて食べてしまってこの世界から消えてしまうのは悲しかったので、ひとつだけ皿に残して、ラップをかけて眠った。
翌朝、ラップを外すと、餃子は4本の足で立ち上がった。もちもちとした足は小さくてかわいらしい。ヂィ、と鳴いて、とてとてと皿の上を歩き回る。どこから声が出ているのかはわからない。人差し指でつつくと、食べものであったときより少し固くなっているけれど、あたたかい。いきものの温度をしている。餃子は皿の上からは出ることなく、熊のような所作で歩いている。かわいい。かわいいのに、かわいいからこそ、口に含みたくなる。ぐちゃぐちゃに噛んで、すりつぶして、飲み込んでしまいたい。親指と人差し指でそっと持ち上げると、餃子はヂィ、と鳴いて4本の足をじたじたと動かした。かわいい。