「うわ、本当に血管が見えるんだ!」神さまはそう言ってわたしの腕や、手や足の甲を見ては無遠慮に触れる。神さまが皮膚越しに血管を押す。その指先は陶器のように白くて、手の甲には血管もなければ毛穴もない。「だってそんなのは神には必要ないからね」わたしの心を読み取ったかのように彼女は微笑みながら言った。
「そうやって食べるんだ、よく噛むんだね。それで細かくしたのを飲み込むと。なんか、気持ち悪いね」神さまは子猫のような顔をしてわたしの顔を覗き込む。麺をすすると、うわ!なにそれ!きも••••••と眉を寄せた。「ねえ口開けてみて」と言うよりも先に、彼女の指先がわたしの口の端を捉える。冷たさもあたたかさもない指が、声のやわらかさとは正反対に強引にわたしの口を開かせる。口内のぐちゃぐちゃに砕かれたものをしげしげと眺めて「なんか、これやっちゃだめなやつだったね、ごめん」と神さまは謝罪する。お行儀悪いからやめて、と抗議すると、神さまは口の端をあげて「わたし神さまだよ、わたしの振る舞いにそんなの関係ないから」と笑った。
神さまの目は磨かれた石のように美しく、やさしい。けれどその美しい目に、わたしは映ることさえない。