しずかなインターネット

日記やエッセイにちょうどいい
文章書き散らしサービス

ログイン

衝撃の鹿①

tekkuteku
·
公開:2026/9/12

 国宝の奈良の大仏を見るために、東大寺を訪れた。聖武天皇が国の不安をなんとかするために仏教を頼った結果、造られた仏像だそう。奈良市観光協会のサイトに、座高1,498cmだと書いてあった。つまり約15mだ。私が約150cmとしたら10倍の高さだ。

 めちゃくちゃデカい。楽しみだった。

 道中、奈良公園を通った。立て看板に、世界で唯一人間と鹿が共存している場所だ、といったようなことが書かれていた。鹿はもう、人間がいようが車があろうが全く動じないで公園とその周辺を闊歩している。のんびりと優雅にすら見える立ち振る舞いには感心した。人慣れしている。

 しかし観光客が鹿せんべいをチラつかせた瞬間、手のひらを返したみたいにワラワラと人に群がっていた。欲望に忠実で大変好ましい。

 ただし、背丈が鹿と同じくらいか、より小さい子どもにとっては恐怖の対象のようで、保護者の後ろに隠れたり泣き叫んだりしていた。鹿が自分と同じ大きさだったら、と想像してみて、子どもたちに同情した。助けてあげたいと思った。

 奈良公園を抜けて東大寺の正門、南大門に来た。大仏同様国宝だ。めちゃくちゃデカい。こちらは約19mで大仏より大きい。圧倒されながら写真を撮った。そして門をくぐるぞ〜!と前を向くと2匹の鹿がいた。その鹿たちは他と様子が違った。

 1匹が、もう1匹のお尻に顔を突っ込んでいた。国宝と大勢の観光客の前で。堂々と。

 私は最初、なんだこれは、と思った。そして、あーなんか便が詰まってるのを助けてあげてるとか?というあり得ないことを瞬発的に考えた。

 なんか見ちゃったな...と思いながら2匹を素通りして門をくぐろうとした。すると背後から大きな笑い声が聞こえた。

 なんだなんだと振り返ったら、外国人観光客が数人2匹にカメラを向けていた。何がそんなに面白いんだろうと思って見ていると、先程の鹿が頭突きをするようにガンともう1匹の鹿のお尻に顔を深く突っ込んだ。またまた、笑い声が響く。

 そこで私はようやく、ああこれは求愛行動なのかと気がついた。観光客たちはそれが面白くて撮影をしていたのだろう。

 私は観光客たちのあっぴろげな反応に一種の気持ちよさと戸惑いを感じた。

 そして偶然にも美しい動物の求愛行動を目撃した驚き。頭を叩かれたようだった。

 後から調べると、あれはオス鹿がメス鹿のお尻の臭いを嗅いだり舐めたりすることで、発情しているかどうかを確認するための行為だったようだ。その後もし発情していれば交尾に至ることもあるらしい。国宝と大勢の観光客の前で?!

 私は複雑な心境で南大門の下に来た。阿吽の像と言われている立派な金剛力士像2体を網越しに見ることができる。これらもまた、国宝だ。立体的で、迫力があり、見応えは抜群だ。なのに私は先ほどの光景で頭がいっぱいだった。あれを笑えない自分がいた。

 なんだかなぁ、と思いながら歩みを進め、東大寺の大仏殿に来た。お目当てのめちゃくちゃでっかい仏像が目の前に現れる。

 デカい。

 下から眺めているので鼻の穴が見えた。

 流石に先ほどのことは頭から抜け落ち、ただただ仏像に圧倒された。

 つづく

@tekkuteku
気ままに日記やメモなど。