「これは気分転換なんだ」
「次の動画が終わったら切りが良いから」
「人間たまにはゆっくりとした時間も必要だし」等
ついやってしまったことに対して、悪魔のような言い訳が自分の中で聞こえる時がある。宿題の合間や夜中など、頭が疲れてきた時に休憩と称してSNSやYoutubeを観るときに、この悪魔の声が聞こえてくる。
この声は、生物として極めて正しい声である。
悪魔は、あなたが何かしら不安に駆られた時、その不安を解決するための自己防衛の反応として、あなたのために囁いてる。
頭が疲れた時にSNSやYoutubeを見るという行為は、言ってみればタスクという「戦い」から一時退避する行動とも言える。そのタスクに対して何かしらの不安があるのだ。悪魔は、その不安を解消するためにSNSやYoutubeへ走れとあなたに命令する。戦いから避けて安全地帯に一旦退避するという、生物として全然真っ当な行動である。
また、こうした悪魔の声はDNAレベルで刻まれている反射的な反応でもある。昔の人たちの必死の努力が生み出した進化の産物だ。昔の人は獲物や敵と生で戦うことが普通にあり、不安やリスクを感じる場合は回避しないと死んでしまうかも知れない。
だから昔の人は、自分はもちろん、子供や孫たちたちも生き残れるように、あなたたちを守ってくれるように悪魔を生み出した。そのため、この反応を意識だけで変えることは非常に難しいといえる。人間にとって最重要レベルで必要な反応だから。
心理学の世界ではこれを「正当化」と呼ぶ。人が不安を解消する行動パターン「防衛規制」の一つとして位置づけられている。そうであるならば、今ここで自分たちが直面する「次の動画が終わったら...」といった反応は変えられないのか。
悪魔の囁きは解消できないのか? そうではない。
正当化という行動は、先ほど紹介した「防衛規制」という行動パターンの一つに過ぎない。他の行動パターンもあるということだ。例えば、憧れの人と同じ行動をとって成りきることで安心しようとする「同一視」、幼いこどものような振る舞いをして愛情を求める「退行」、不安という考え方を捉え直し別の行動のモチベーションとして活かす「昇華」といった行動が挙げられる。正当化以外の反応に置き換えられないか。
つまり、悪魔の声を正しい声にすり替える。
悪魔の声は、前提として「Youtubeを観続けること以外、自分にとって安心できるものがない」といった誤った認識が自分に刻まれているから生まれる。Youtubeを見ること以外の選択肢は存在しないと自分が無意識に思い込んでいるのだ。だからこそ、悪魔の声は「次の動画が終わったら...」と呟くのだ。自分を不安から救うために。
言い換えると、悪魔に「これじゃダメです。もっと良い救いの方法があります」と提案すれば良いのだ。Youtubeを続けて観ること以外の選択肢が頭に浮かぶようなやり方を悪魔に提案する。
例えば料理。
休憩としては料理が良いのではないかと悪魔に提案するのはどうだろうか。料理ってかなりの気分転換であり休憩になる思う。特にデスクワークをしている人には。
料理は仕事で使わない身体の部位を動かす。バスケやアメフトのようなきつい動きもない。抽象的なことをあまり考えなくて良い。そして栄養も補給できる。難しい料理には挑戦しなくて良い。茹でる、焼く、蒸す、調味料をかける。たったこれだけで良いのだ。恥ずかしくないし、意外とシンプルイズベスト。そして、食事という生物にとって最高の安心材料がゴールにある。
ただ、これを悪魔に提案して納得してもらうには、思ったり考えるだけではダメだ。
悪魔が守りたいのはあなたの心ではなく身体だ。
悪魔はあなたの心ではなく身体に染み付いた記憶を見て働きかける。あなたの身体が料理って素晴らしいと提案しないと悪魔は納得してくれない。
まずは試しに料理をしてみよう。とりあえず茹でる、だけでも良い。レシピサイトを参考にしても良い。それだけで全然変わる。
料理が真にあなたを守る行動だと悪魔に納得させられたら大成功だ。結果として料理がYoutubeにとって代わるかもしれない。今後は悪魔の声による反射的な反応が料理になるだろう。それならあなたも安心できる。
ついやってしまいがちな悪魔の声を解消するために、まずは料理から始めてみる。僕は何を始めようかな。