11. 青い魚

·

2024年3月22日(金)

京都と大阪へ。薄暗い早朝に京都に到着。高速バスは安いが、早朝の時間を持て余す。駅の構内のマクドナルドには開店を待つ人だかりが。若者が多く、旅行者なのか、地元民なのか、区別がつかなかった。オープンと同時に入店。アナログなオーダーの列を尻目に、さっさと注文を済ませて、コーヒーを受け取る。カフェインを脳みそと眼球に注ぎ、旅程の確認。今回の目的は、大阪の器のお店「futou」だ。そして、開催中の山下雅己さんの展示と器などの購入。つまり、旅の目的に散財が含まれる。経費は抑えつつ、滞在は楽しみたい。

ひとまず、早朝の京都を楽しむ。適当に歩き、目的地を目指した。たまにマップを開くが、基本的には勘で進む。知らない土地を歩く醍醐味だ。道中、西本願寺に立ち寄った。さすがに人は少ないが、ちらほらと参拝者を見かけた。観光客はもちろん、出勤中のサラリーマン、明らかな地元民。お堂からは、お坊さんたちの声が聞こえた。念仏とも、お経とも異なり、耳に馴染む。どうやら、「和讃」と呼ばれる讃歌らしい。なるほど、歌声っぽいと納得。空気も冷たく、清廉な雰囲気だった。たまたまだが、素敵な時間を過ごした。

のんびりと歩き、「まるき製パン所」に到着。早朝だが、次々にお客さんが現れる。ここはコッペパンのサンドが名物。具材も豊富なので、セレクトが悩ましい。熟考中、千切りのキャベツを無限に生み出すスライサーの異音が聞こえる。「Ambient Kyoto...」と思った。白身魚のフライのパンを購入。朝食をゲットだ。電車に乗り、北大路へ。賀茂川の近くのお店「資珈琲」に向かう。奇妙な店構えが面白い。言い方が悪いが、ハリボテに見える。外観も魅力的だが、無料のバナナ、店内に括り付けられたAesopのボトルなど、興味は尽きない。コーヒーは店内でもいただけるが、店主さんの計らいで川べりへ。朝食を摂る。上空ではトンビが旋回、足元ではスズメがチョンチョンと飛び回り、遠くには比叡山が見えた。川べりは往来が多く、それぞれの朝の光景を眺めた。

午前中は、京都府立植物園、糺の森の周辺を散策。休憩と散歩を挟み、写真を撮る。正午、昼食の時間が近付き、行きたかったお店に辿り着くが、オープンの気配が感じられない。扉の奥を覗き込む人も見かけたが、店内は暗く、カーテンも開かなかった。しかし、行きたいお店の候補は無限だ。早々に諦めて、三条へ。広東料理のお店「龍鳳」に入店。チャーハンと餃子を食べた。酢豚と春巻きも食べたかったが、お腹と協議を重ねた結果のチョイスは正解だった。

大阪、西田辺へ。駅の治安が悪い。後日談だが、友人に「準ゲットーのイメージ」と教わる。西成が近いらしい。なるほど。道中、鶏の足が詰まったビニール袋を見つける。廃棄なのか、業務用なのか。もはや、論点の在り処もわからず、怪訝に眺める。町の雰囲気を味わい、ついに「futou」に到着。入口が広く、自然光を取り込めるお店だった。店内の至る所に山下雅己さんの作品が並び、大きなブロック状の什器に並べられた光景は圧巻だった。これが見たかった。定番の人型、奇妙な突起が生えたものたち、四足の奇妙な生き物など、どれも魅力的だ。グロテスクだが、可愛らしく、釉薬の鮮やかさが美しい。店主さんと話しつつ、作品を吟味。結果、陶製の作品と器などを購入。大満足。

夕方、京都に戻り、河原町へ。銭湯に直行、熱いお湯に浸かる。一日の疲れを労い、旅の締め括りに酒場を目指す。まずは「三木半」に入店。すでに酩酊中の常連さんたちに紛れ込み、メニューと睨めっこ。九条葱のぬた、いさきのフライ、鯖寿司をいただく。花金だからか、お客さんはひっきりなしに訪れる。長居は無粋なので、ささっと退店。新幹線の時刻が近付くが、立ち飲みのお店に滑り込み、旅の余韻に浸る。

夜中、自宅に到着。日帰りの旅行は短時間に予定を詰め込むので、一日の出来事が目紛しい。時間内の行動力はバグり、異常な歩数を叩き出した。疲労困憊だが、明日もお休み。旅の休息も旅程のひとつだ。

@tgmrmzk
大晦日に生まれた。