2023年12月29日(金)
休日。飛び石の休日が続き、師走の空気を感じられない。ゆるやかに年末に向かう。大掃除のチャンスなので、冷蔵庫などを片付ける。年末の大掃除は風物詩だが、年末年始にはゴミの回収が行われない地域もあるだろう。大掃除には不向きな時期なのではないだろうかと、ぼんやりと考える。水回りの掃除は終わらず、換気扇は異音を唸らせる。
渋谷へ。ケリー・ライカート『ファースト・カウ』を観る。牛の映画だが、牛は目立たず、男たちの行く末を見つめる。ケリー・ライカートの作品は、鑑賞の手段が少なく、ほとんどが未見だ。以前、『ウェンディ&ルーシー』を観たが、これも面白かった。旅の物語なのに、映画の大半は立ち往生。精神がすり減る作品だった。ちなみに犬の映画だ。『ファースト・カウ』と『ウェンディ&ルーシー』の共通点は、どこかに行きたいが、そこを出られない人間が描かれる。どちらも小規模な出来事が起こるが、それすらも解決が難しく、人生が滞る。『ファースト・カウ』の舞台は未開拓の土地で、自然の美しさも魅力的だった。人間よりも、自然が強い。それを感じさせる説得力があった。終盤の展開も素晴らしい。きっと、ほとんどの人たちが結末に気付く。物語はそこに向かう。心を掴まれるラストだった。他の作品も観たい。
吉祥寺へ。角銅真実さんのライブ「BIG HUG 2023」を見る。最高のタイトル。年末に相応しい多幸感が溢れるイベントだ。ギター、ドラム、ウッドベース、チェロの編成で、角銅さんは、たくさんの楽器を操る。それは声も同様で、発声と吐息が音楽だった。新作には未収録の新曲が衝撃的で、勝手に「話したがる曲」と呼称する。音源の優しい手触りとは異なる、アグレッシブなパフォーマンス、角銅さんのチャーミングな人柄が交錯するライブだった。
終演後、馴染みのお店へ。名前は知らずとも、顔見知りの人たちがたくさん。入れ替わり立ち替わり、次々に現れる。今年の走馬灯だった。年明けに生まれ変わるのだろうか。たまたまだが、映画も、ライブも、馴染みのお店も納めた。ゆるやかだが、確実に年末は加速する。