「あぁ……これでやっと…皆に謝れる…」
サラサラと砂のように崩行く過去にて仲間であったライルの身体。
ライルの安堵したような言葉。
みんなが死んでしまったのはライルのせいではないのにライルは自分自身を責めていた。
ジョゼと同じく100年の時を超えても尚消えない悲惨な過去。
過去を変えることは禁忌。
だけど…自分は…そんな葛藤に拳を握りしめ歯を食いしばるしか薫は出来なかった。
ライルを見送ったあと、薫は100年前のマグメルへ行った。
すぐ向かった先は酸の谷。
黎明の旅団の拠点だった。
そこには見覚えのある後ろ姿があった。
しかし、様子が変だった。
片腕がなく義手をしたライルの姿。
「…っ…あの…。」
思わず薫は彼に声をかけていた。
「…っ!…そうか…生きていたのか…」
絞り出したような声を出すライル。
ライルの顔は酷くやつれていて、何日もその場から動かず眠っていないのは薫にはわかった。
「…大丈夫ですか…?」
薫はそれしか言葉が見つからなかった。
「…敗れたのさ。あのバケモノに…アレッサンドロ・ゴッボーに…。」
アレッサンドロ・ゴッボー。
ジョゼとクレイグが、酷く警戒していた人物の名前。
あの男が関わっているのと同士にライルの片腕を吹き飛ばすほどのバケモノがいたということ。
「旅団は全滅だ。生き残りは俺とお前しかいない…全て失った…っ…。」
ライルは言葉を続け何があったかを話してくれた。
絞り出したようなその声は耳を塞ぎたくなるような悲痛なものだった。
「ここで朽ちてしまおうかと思っていたが…お前の顔を見て気が変わった。」
ライルから放たれた言葉は意外なものだった。
「…ライル…」
ライルの言葉は続く。
「ここにアイツらの墓を立てようと思う。お前もたまに見舞ってやってくれ…きっと喜ぶ」
ライルは第1拠点に墓を作ると言い出したのだ。
その声は先程とは変わり少し穏やかになっていた。
「お前は……死なないでくれ。」
そうライルが弱々しく呟いた。
薫の身体が勝手に動きライルを優しく抱きしめていた。
ライルの体はとても華奢でそんな華奢な身体に後悔という重荷がのしかかっていたと考えると自分は倒れてしまう。
「あなたこそ、死なないでください。…貴方には僕がいますから……だから生きてください。」
薫は泣いてしまっていた。
その顔にライルはキョトンとしていた。
「…泣くな。」
ライルも返事するかのように抱き締め返してくれた。
そして誰よりも泣きたいライルは泣かず瞳から溢れ出る薫の涙を拭いフッと困ったような笑顔を見せた。