幸せなひとりぼっち
ハリウッド版リメイクがあるみたいだけどそういうのも知らずに見た。最初に本筋と関係ない話をするが、ノルウェージャンフォレストキャットがもっふもふでとてもかわいい。美猫。(ごくわずかだが、猫や犬が虐げられるシーンもある)
頑固者で偏屈、すぐ怒鳴るし感じの悪いおじいさんが最愛の妻を亡くしたことで後追い自殺をしようとするけれど、ことごとく邪魔が入って失敗に終わり、その邪魔を対処しているうちに…って話。
「最愛の人(この映画では妻)」という表現はとてもありふれていて、そう書いておけばいろんなことが省略できる便利な言葉だなっていうのを個人的になんとなく感じていて。だけどこの映画は主人公にとって妻がどれだけ「最愛の人」であったか、どんなにかけがえのない相手であったかということを短い時間で的確に繊細に描いていて、その愛情とそんな人を失った深い悲しみに途中からずっと泣いてた。
回想のシーンが全部いい。色彩も音楽も控えめで彩度が低く、北欧の雰囲気だな…って感じた。だからこそ妻と初めて出会うシーンの、ハッとするような赤い靴の色が鮮やかですごくよかった。あと毎日供えに行くお花の色。序盤から、とにかく嫌な奴っぽく描かれているのに妻の墓前では素直に「さびしいよ」と何度も言うところも泣けてしまう。猫を受け入れることになったときの、「どうしてこんなにキッチンが低いの?」「妻に合わせてたんだ」ってやりとりに、そこそこ身長差はあるみたいだけどそこまで?って思ってたらバスの事故のことがあり…そこも、もう、ウワ~~~~って泣いた。
迷惑な(と最初は思っている)隣人との付き合いによって、もともとの人の良さだとか手先の器用さで主人公の人となりが明かされていく構成もよかった。コメディ要素がそんなに笑えなかったんだけど、唯一仲の良かった近所の友人と仲違いした原因が車に対する考え方の違い(って言っていいのか??)だったのは笑った。そ、そんなことで?!まあ本人たちからすれば大ごとなのかもしれないが。。小さな女の子も含めて、出てくる女性たちの描かれ方が好きだった。(チワワの飼い主は除くが)あっ新聞記者の女性が中にいるのにガレージの扉を閉めたあと、隣人の奥さんが「あんなことしても彼女は消えないのに?!」ってめっちゃウケてるところも笑ったな。
妻への愛のみならず、ところどころで父親との思い出や、教えが今も息づいてるってわかるセリフもよかった。人が人を愛することって、いいな…となる映画だった。ラストシーンも泣ける。
「ノッティングヒルの洋菓子店」も、最愛の人を亡くすところから始まった話だったけど、3人の女性にそれぞれスポットが当たることでここまで故人を掘り下げることはできず、このあたりが物足りなかったんだな~と思うなどした。