音楽のような本が作りたい

tnk4on
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  • 2024-01-06読了

  • 木村 元 著

  • 四六変型判上製/たて組み

  • 184ページ

この本はタイトルに惹かれて読んだ。音楽と本、どちらも自分に強い繋がりのあるキーワード。そして読了。結果、大正解だった。音楽の本を作ってきた著者は音楽を良く理解し、考え、言葉を紡ぎ、本を作る、これはもはや出版社の編集者という枠を超えて創作活動を行う創作者(狭い意味での芸術における制作者と同様)だと感じた。どのストーリも自由で、文学的でもあり、どれも素敵な音楽の思索に溢れている。本書の「あとがきにかえて」で語られているこの本の喩えを音楽美学と表現しているのはとても素敵だ。本書で特に感心したのは、著者の言う音楽が、ポピュラー、ジャズ、クラシックといった一般的なものだけでなく、音そのものを使った芸術(狭義の意味での現代音楽)まで含めた音による創作を音楽としたありのままを捉える姿勢と感性を持ち合わせていることだ。この著者が携わってアルテスパブリッシング社から出た書籍はどれも素敵だろうなぁと思う。書籍の中でフォルマント兄弟(三輪眞弘氏、佐近田展康氏の両名は20年程前から知っている)の名前が出た時は、そうきたかと思った。その後にアルテスパブリッシング社の書籍の中に「配信芸術論」を見つけて、ああなるほど、この書籍を出版できる感性があるのかと良い意味で妙に納得できた。アルテスパブリッシング社から出版されている他の本もどれも読みたいと思った。まずは本書の前著に当たる「音楽が本になるとき」を読んでみたい。

[内容メモ]音楽之友社を退職し元同僚と立ち上げたアルテスパブリッシング社を創業した著者による執筆。音楽について、本について、折々の関心ごとについて綴った13編の文章から構成される。冒頭には読書と合わせて聴けるSpofityの専用BGMのプレイリストのQRコードが付いている。本書の前著は「音楽が本になるとき」。

出版社サイト:https://kodachino.co.jp/book/book-213/

@tnk4on
音とテクノロジーが重なる領域が好物のデジタルクリエイター。 大阪芸術大学音楽学科音楽工学コース卒業。音・音楽作品の創作を行う。 レッドハット株式会社所属(投稿の内容は個人の見解であり、所属する組織や団体を代表するものではありません) ウェブサイト:tnk4on.github.io