お昼ごはんの後がこの日のメインイベント。
観劇です。昨年の秋に地元にオープンした新しい劇場に行くのもはや3回目。小劇場は1回、中劇場は今回が2回目。大劇場だけまだ入ったことがない。関西より近いので行きやすいし交通費も安く済むので、両方で公演がある作品はこちらに行くようになった。
『カラカラ天気と五人の紳士』
多分再演とかかな?過去に上演された時はどんな感じだったのか知らない。ただ不条理劇×加藤拓也さんって絶対に合うでしょ!?と期待。合う合わないはさておきにしても、加藤さんの演出作品が近場で観られるのならば行かねばなるまい。しかしながらものすごい豪華キャスト、チケットが取れるか心配していたけれど、劇場先行よりも先に某プレイガイドの先行予約のお知らせが届いたので助かった。そこでなんとか。地方公演では最速先行だと思うのだけど、それでも1階席のほぼ最後列。そりゃみんな観たいよね…。贅沢は言わない、生で観られるだけで御の字ですとも。
※以下、内容の詳細に触れます。
劇場に入って舞台上を見た瞬間、最高だなと思った。地下鉄の駅のホームと思われる舞台セット。案内表示の掲示とか、東京にこういう駅なかったっけ?と思わせるリアルさ。そしてシンプルだけど何も動かせなさそうな様子が、ホームだけのワンシチューション劇だと想像させる。駅のホームだけで、何が?
まず棺桶を運んでやってくる紳士5名。それを台座?の上に置こうとするも上手く置けなくてドタバタとする。頭を使えば分かるじゃない、みたいな事になぜか気付かない、いちいち鈍くてまどろっこしい人たちのコントかよ!!的なやりとりがもう面白い。
棺桶に入るために誰か死なないといけない…いやいや、死とか命に対する考え方が軽すぎ。というか、あるから使わなきゃって思考は棺桶でも通用する?!死ぬためにわざわざ天井の高さまで登って照明を使って感電させようと試みる…いやここホームなんだからもっと先に思い付く方法がなくない!?そうはならんやろの繰り返し。それなのに、会話のちょっとしたところにリアリティがある。人ってこういうリアクションするよね、とか、返す言葉のチョイスがツボで、それはつまり「ツボ」→使い方やニュアンスを理解できる→共感のひとつ という意味だと思うので、やっぱり人間をよく観ている人が作った作品だなぁという印象。加藤さんは本当にこういうさりげないリアリティ・生々しさの表現が上手い。別役実さんの作品なので脚本=台詞はそのままなのかもしれないけれど。(という事は別役さんもそうなのかな)
非現実的だなぁ…という紳士たち、後で加わる女たち、いちいち奇妙奇天烈な行動なのに面白くて観入ってしまうし、途中でなんとなく気持ち悪い違和感を感じて気付いてしまう。これはあり得ない世界の話ではないかもしれない、自分に、自分の生きる世界にも関係のある事なのではないかと。初めは笑っていたはずが笑えない、これぞ加藤さんの作品だよなぁと。加藤さんの作品をそんなに多く観たわけではない、でも独特の余韻を残して終える印象が強い。前半はコメディの要素が強くて、わたしの今まで観た加藤さん作品の中では異質な気がしたけれど、やっぱり加藤さんだなーと思った。そしてやっぱり好きだな、と。
ちょうど今放送中のドラマ、加藤さん監督・脚本の『滅相も無い』にも『カラカラ天気~』に出演している堤さんがいらっしゃるので、なんだか不思議な感じ。こちらのドラマも面白くて毎週楽しみにしている。
話が戻るけれど、駅のホームが舞台なのに全く電車が来る気配がない。照明の色の変化で時間の経過も分かる。何時間もいるのに電車の存在は全く感じさせないから、これは駅のようで駅ではないんだろうか、かつては駅として機能していたけれど、もう駅として使われていない場所なんだろうか?そんな事も考えた。ホームでやり取りが繰り広げられている間に一度も出てこなかった電車が、終盤にホームではない場所で登場する。言葉でだけ、けれど大きな存在感を与えて。ここで電車が出てくるんだ、とゾッとした。
すごい作品だった。終演後のお手洗いだとか退場している時に聞こえてくる感想の声も上々。また加藤さんの作品を上演して欲しい。小劇場もあるし。
後篇に続く。