本家ストリートファイターの"弾"タイプの真空波動拳じゃなくて、「MARVEL vs CAPCOM」の時の"ビーム"型の真空波動拳ね。職場のお局様を相手取るにはアベンジャーズに匹敵する程の格闘家でなければやってけないのだ。少しずつ強くなる、それがいいんだ。
もしくは「遠投の腕輪」を装備して、「根絶やしの巻物」を投げつけてやりたい。モンスターの種類的には多分ノロージョです。
ひとり情シスとして東京異動になって以来、職場のお局様相手にマインスイーパーを強いられているんですわ。いやもうゲームにもなってねえな。ヒントも少ないんだから。モンスターハウスの出入り口に大型地雷があるあの感じ。こっちがちょっと口を開けば、相手のリミットゲージが「ギュンッ」って溜まります。常時「いかり」状態です。口応えはもちろん、説明や質問も恐れ多くてできたもんじゃない。エスケプの魔法も通じません。奴らはレイドボスなので。
ひとり情シスとしてお局様と対峙する時、刃物振り回してる凶暴犯を確保するお巡りさんもこんな気持ちなんだろうなーって考えてる。
例えば「PCが壊れた」って電話でものすごいざっくりとした問い合わせを受けたとします。あまりのざっくりさにここでまず「どんな状況ですか?」と質問したくなりますが、ぐっとこらえてましょう。"すぐに直接出向かないお前は誠意がない"という<烙印 -スティグマ- >を刻まれることになります。「わっかりましたー!」とすぐに席を立つ。これが正解。なぜならお局様はその名の如く貴族であり、独身男の一人情シスなぞ社畜でしかないのだから。社畜に神はいないって「ファイナルファンタジータクティクス」のアルガスも言ってたでしょ。
まあこういう問い合わせなんて、だいたいかcaps lockを間違えて押したとか、社内ネットワーク内なのにCiscoのVPNから繋いでいるとか、アプリかPCを再起動すれば治るようなものなのですが、ここで大事なことは如何にお局様の問い合わせが難しい問題であるかを演出する必要がある。
「再起動してください」で済む話だったら、初手で再起動を提案してはいけません。あれこれ適当になんか調べたフリをして、最終手段としての「よし、こうなりゃ再起動しかないですね!」といった具合に切り札のように繰り出しましょう。
サポート詐欺の画面が表示された時も、さくっとEscキーから閉じて「はいおしまい」と簡単に終わらせてはいけません。「ウワーッ! なんてこったい、このままじゃ会社はおしまいだー! でもご安心ください、情シスの私がなとかしてみせます!」と演出してから、Escキーを押しましょう。そして適当にコマンドプロンプトを立ち上げて、そこから迫真の面持ちでウイルススキャンを走らせて「……どうやら今回は間に合ったようです」と大仰に対応しましょう。もうこれでお局様のハートはがっちりよ。お局様のハートなんか別にいらないけれども。
真面目に考えると、あちらからすれば「『こんなことをわからないのか』と思われたくない」って気持ちなんでしょうね。自分のしょーもないプライドだし、こちらからすれば、㍉も貴方がたのパーソナリティに興味もないのでどうでもいいのだけれども。
奴らはどのみち理解できてない、できないのに「なんで再起動しなきゃいけないの?」とか質問してくるわけよ。そんなもん人間も疲れれば寝るのと同じだだろうと。メモリに残ったデータがうんぬんの話する? してもわかんないでしょ?
あーめんどくさ、ってなるわけです。
もしまかり間違えて、メタルギアでいうアラート状態になったら、まともにやり合おうなどとは考えてはいけません。彼女らは自分の中のオリジナル世界観の中で自己完結しています。「言った言わない」の問答は無意味です。基本負けイベントなので。メンタルへのダメージを最小限に抑えて如何に早急に撤退するかを考えましょう。かの関白秀吉公の金ヶ崎の退き口ように撤退戦の妙こそ、出世の足掛かりにもなるので。
いやでも、現実はダンケルクのイギリス兵でしかないのだけれども。
「誰々と誰々が社内結婚してる」だの「あの女性管理職はバツイチ」だのといった下世話な話をされても「うるせ~~~~!!知らね~~~~~!!FINAL FANTASY......」だし、そもそも作業に集中させろよって話。あとお前も未婚じゃろがい。
思えば地方にいた頃はこんなことなかったなー。
異動前の地方にいたころは基本的に自分は情シス部の中とベンダーだけで完結して、他部署の人間と接触する機会はほとんど無かったというのもあるけれども、同じ部署にいたオバちゃんがたは歴戦の勇士でした。
他部署のヤカラにちょっと詰められたり、あるいは社内の暗黙知のせいで手間取ってたりすると、「小僧! アタシらに任せな!!」と手を差し伸べてくれる頼れるおばちゃん揃いでした。具体的に表現すると「バトルシップ」の終盤、戦艦ミズーリを動かすために勢ぞろいした古株たちです。纏う雰囲気はまさしくMADMAXの鉄馬の騎兵たちです。
先日も出張で異動前の職場に顔を出したのですが、鉄馬のオバちゃんたちはやつれた僕の顔を見るなり、「小僧! ちゃんと食べてるのか!!」「役員にいじめられてんな! ガハハ!!」「困ったことがあったら、いつでもTeamsで相談してきな!」と心配されてしまいました。お局様とは全く違う、気のいいオバちゃんたちです。
場所が変われば、人も変わることと同じように、仕事も変われば、人が変わるというか。
現場から遠く離れた東京の小綺麗なオフィスで、役員にへつらったり、Excelとにらめっこして罫線を一生懸命引いてたり、パワポの見栄えを整えることに腐心して生産性に繋がってるかわかんねえことやってれば、さもありなんって感じですわ。