・いや本当に良くて、劇場出た後に外の景色が変わって見える体験を久々にした。些細なシーンのひとつひとつがお守りみたいに胸の内に残っていて、この"世界"で生きていることを前より大切に思えるようになった気がする。朝玄関のドアを開けたあとに空を見上げて、目を細めてみたりしている。
・構成はジム・ジャームッシュの『パターソン』と非常に近似しており、俺はあの映画も大好きなので嬉しい。退屈で困難な"世界"から如何にして詩情を見出すか。これは現代社会で正気を保って生きていくための具体的な方法論だと思うのだが、作中役所広司演じる平山が逆に"正気を失ってる側"として描かれていたのが皮肉だと思った。
昨今の"丁寧な生活"ブームって、コロナ禍において人々が必死に正気を保ち続けようとした結果生まれた副産物じゃないですか。で、そういう"丁寧な生活"をやってるっぽい人々がこぞってSNSに「PERFECT DAYS」観ました!みたいな投稿しているのを見ると、コロナが落ち着いたとてさっぱり明るい兆しが見えない世界で、みんな必死に正気を保つ方法を探し続けているんだな、と思う。お金も時間もないけど、それでもどうにかこの世界を愛そうとしているんだな、と思う。豆からコーヒーを淹れることも、部屋に花を飾ることも、神社で拾ってきた楓の苗木を育てることも、思い通りにならない"世界"の隙間に詩情を見出すための行為ではないか。
・そういえば『暇と退屈な倫理学』に↑こんなことが書かれていたような気がする
・日常から詩情を見出すためにはある程度の教養が要る
・俺は教養が無いので平山が読んでいた本も聴いていた曲も何一つ分からなかった……
・退屈と適切に向き合えないと破滅的な快楽に身を投じてしまいがち(正気の失い方の一例)
・役所広司、すげ〜〜〜〜〜!黙ってても何かを伝えられるのが良い役者の条件なのかもしれない。ラストシーン本当に素晴らしかった。
・時間の関係で普段は行かない渋谷のTOHOを訪れたという嬉しい符合
・人生は寂しいけどたまに嬉しいこともあって、1人だけど1人じゃない