周回軌道上の君へ

tokio
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BUMP OF CHICKENツアー「ホームシック衛星2024」観てきた。記憶が鮮明な内に感想を書き記しておこうと思う。

※公演のネタバレを含みます※

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このツアーは2008年に行われた同名のツアーのリバイバル公演という位置付けにあるわけだが、当時小学5年生の俺はまだBUMP OF CHICKENというバンドの存在を知らないどころか音楽自体にもさほど興味がなく、団地の公園でダンゴムシとかを捕まえていたと思うので、当然参加していない。その後中学に入ってから友達に『車輪の唄』を教えてもらってBUMPのことを知り、初めてライブに足を運んだのは2012年「GOLD GLIDER TOUR」のタイミングだった。好きになればなるほど過去に行っていたツアーに参加できなかったという事実が悔しく、「出会う前から育った 会いたかった」「出会う前の君に僕は 絶対出会えないから」といった歌詞を聴くにつけ「ほんまそれ😭」と下唇を噛み締めていた俺は、今回ホームシップ衛星がリバイバルされるという報せを聞いたとき飛び上がって喜んだ。

ホームシック衛星で引っ提げられた『orbital period』は藤原の思想が非常に色濃く反映されたアルバムとなっている。航星日誌、誰かがニコニコに違法アップロードしてくれてた音源死ぬほど聞いてたなあ。

今回リバイバルするにあたり当時のセトリがほぼそのまま使われていたらしい。もちろんorbital periodの曲が大半を占めており、飴玉の唄・かさぶたぶたぶを生で聴くことができて感無量でした…。(arrowsも聴きたかったけど……😭)

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僕らのリスナーには、心に、何らかの傷をね、負っている人も多いんじゃないかと思います。これは20年以上ステージに立って、みんなに向けて演奏してきて、歌ってきて、肌で感じてきたことです。たとえば拭いきれないような後悔とか、恥ずかしさとか、なんだろうね、こう……いまだにズキズキするような、消化しきれない……何かそういうものを、治らない傷のように抱えてる人。そういう人が僕らの音楽を、僕らが思ってる以上にとても強く信じてくれて、大切にしてきてくれてたんだな……と。(2020年9月27日 PONTSUKA)

チャマの件に寄せて藤原基央がラジオで語った言葉だ。痛みの塔を作りたいわけではないのだが、長年彼らの曲を聴いてきた自分もやはりそのようなリスナーの1人であるという自覚がある。彼らに出会った中学、そして高校、大学、社会人の今に至るまで俺はずっと他人とのコミュニケーションが上手く取れなかった。だいぶマシになったとは思うが、未だにそれが酷かった時期のことを思い出しては胃の奥がギリギリと沈んでいくような感覚を覚える。自分が自分として、残り何十年も生きていかなければならないという事実に半ば絶望していたとき、側で話を聞いてくれて、背中を押してくれて、ときどき叱ってくれたのが、彼らの音楽だった。

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ダンゴムシを捕まえていた時代から少しずつ大人になって、BUMP以外にもたくさんの音楽を聴くようになった。それでも新譜は追い続けているし、ライブにも必ず参加しているが、彼らの音楽に寄りかからずとも生きていけるくらいのところには、ようやく辿り着くことができたように思う。小さくなった瘡蓋を見て、随分遠いところまで歩いてきたなあと思うとき、それでも4つの赤い星から届くメロディーが途切れることはなかった。

○月×日本日モ通信試ミルガ 応答ハ無シ

ワタシハドンナニ離レテモ 

イツモアナタノ周回軌道上

夜空に光を放り投げた

あの泣き声はいつかの自分のもの

記憶に置いていかれても 活動は続く遠く

応答願ウ命ノ地表カラ打チ上ゲラレテ随分経ツ

ズット通リ過ギル星ノ 数ヲ数エテ飛ンデキタ

ソノ度覚エタ音ヲ繋ギ メロディーヲ送ル

ワタシハ ドンナニ離レテモ

イツダッテ僕ノ 周回軌道上

アナタハ ドンナニ離レテモ

イツダッテ君ノ 周回軌道上

応答願ウ 涙ト雲ノ向コウ

虹ノ隙間ニ目ヲ凝ラシタ

キットマタ巡リ会エルト 心ノ奥デ信ジテタ

ココニイマイルト分カルヨウニ

メロディーヲ送ル

応答願ウ 心ノ裏側ヲ グルリト回リ戻ッテキタ

flyby 距離ハソノママデモ 確カニスグ側ニ居タ

バイバイ 忘レテモ構ワナイ 忘レナイカラ

応答願ウ ズット 応答願ウ

教エテモラエタ声ヲ乗セテ メロディーヲ送ル

○月×日本日モ通信試ミルガ応答ハ無シ

アナタハドンナニ離レテモ 

君ノ心ノ周回軌道上

BUMP OF CHICKEN 『?』(voyager+flyby)

アルバムのオープニングとエンディングとして作られたvoyagerとflybyが、今回トリで一つの曲のような形式で演奏されていた。果てしない旅の途中で、ときどきこんな奇跡に出会う。いつか周回軌道上にいる"君"ともう一度会えたら、それを伝えたい。そうして俺は、何度でもこの夜のことを思い出すだろう。