仕事で5日ほど海外に行くことになり、せっかくなので日記に残そうと思う。初めての海外で浮かれる反面、出国が近付くほど憂鬱になっていった。環境の変化に死ぬほど弱いのに、5日も日本を離れて生きていけるのだろうか…
1日目 シンガポールへ
出発が早いこともあり、前日早い時間から布団に入っていたが緊張でほとんど眠れず、最悪のコンディションで朝を迎えた。
もう不安だ…と落ち込みながら電車に揺られ、空港に到着する。予想より混雑しておらず、他の人の見様見真似でどうにか出国審査まで完了した。夜眠れないくらい緊張する癖に、なんとなく長い列に並べばどうにかなるだろうという心構えで国を出ようとするのは怠慢すぎるので、どうにかしたほうがいい。眠れなくてTwitterを開く時間で調べておけば良かった。
落ち込んだり反省したりしていた割に、搭乗口付近には空港でしか見ることがないタイプのお土産がたくさんあり、急に楽しくなってきた。国際線のため、外国人向けの店もたくさんある。一通りウロウロして満足すると、セブンで飛行機で食べるおやつを買って出発の時間を待った。おやつはなんぼあっても良いですから。
ようやく搭乗の時間になり、飛行機に乗り込むとエコノミーでも座席にiPadくらいの画面が付いていて感動した。事前にスマホに小説をダウンロードしていたが、せっかくなので機内の映画を見ることにする。いろいろ迷って『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』を選んだが、あまりにおもしろくて2回続けて見てしまった。おもしろいものを何度も見てしまうオタクの性が雲の上にいても抜けない。若いウォンカ役のティモシーは好青年の見た目で心優しく非常にかっこいいのだが、時折見せる表情が『チャーリーとチョコレート工場』のウィリー・ウォンカとそっくりなのがすごかった。旅行日記なのに普通に作品の話を長々としそうになっているので、これ以上の感想はTwitterにでもあげることにしよう。
さて、夢中でウォンカとチョコレート工場の始まりを見ているうちに、機内食の時間になっていた。食いしん坊のため機内食はどんな感じかあらかじめ調べていたのでなんとなく内容は知っていたが、想像の倍くらい出てきた。牛丼かシーフードパスタを選べたのでパスタを選ぶと、パスタ、パン、ミニそば、チーズ、クラッカーが出てきた。自分のところに間違えて来てないか周りを見渡したが、みんな同じ量が来ていた。
機内食を食べてしばらくすると、全然眠れなかったのと大量に炭水化物を摂取したことで血糖値が上がってかなり眠くなってきた。まだ引き続きウォンカを見ていたが、眠さに抗えずしばらく仮眠をとった。だが、座ったまま寝るのが下手すぎてすぐ目が覚める。しばらくうつらうつらしていると、長時間座り続けていることによる尻の痛みで眠気が飛んだ。人間は6時間も座るようにできていない。
機内の話が長すぎて飽きてきたので、そろそろ着陸付近の話に移ろう。雲を抜けて海が見えるようになると、たくさんの船がシンガポールへ向かっているのが見えた。日本ではまず見ない光景に、本当に外国に来たのだと実感した。
長い空の旅を終えて無事飛行機が着陸すると、機内がやたら暑くなる。さすが南国シンガポール、外の気温は30度を超えており、機内から見ても日差しが真夏のそれである。先週末の寒暖差でやいやい言っていた人間なのに、急に常夏の国に来てしまって体がびっくりしているのを笑えるくらい実感していた。もしかしてめちゃくちゃ暑いんじゃないですか?と体が恐る恐る汗をかいている。
そんな体も外を歩き始めると正気に戻り、日差しと暑さで普通にめちゃくちゃ汗をかくようになった。周りを見るとヘソ出しの服を着ている人も多い。右を見ても左を見ても、そこは常夏の国だった。
滝汗をかきながら地下鉄を乗り継いでホテルに向かい、チェックインを済ませると長旅の疲れがどっと出た。シンガポールに着いてから私用のスマホがネットに繋がらず、ホテルのWi-Fiに繋げてようやくネットが見れるようになってかなりほっとした。知らない国で見る見慣れたフォロワーたちのツイートが身に沁みる。
ネットに繋がるうちにまほやくもログインしておこうと思ってアプリを開くと、ログストが始まったので異国にいることも忘れてニコニコで北の魔法使いたちの会話を聞く。ログボを貰ってホームに行くと、いつも通りファウストが「ヒースとシノが、君を待っていたようだけど」といつも通り迎えてくれて、さすがに涙が出た。オタクで良かったと思う瞬間だった。
疲れたし今日はこのまま部屋にこもっていようかと思ったけど、どうしてもホテルに来る途中に見かけたいろんな店が気になったので、外を少し散策することにした。
都市部に来ているので高いビルが多く、いろんな店があって歩くだけで楽しい。日本の店もかなりある。名前がちょっと違ったので見間違えかと思ったが、ドンキを見つけてしまったので入らざるを得なかった。
お馴染みの店内BGMも英語になっており、先日ドライブに行ったときに友人が「家でドンキの曲を流すと良い」と教えてくれて、車の中で流してくれたのを思い出した。旅行先でのドンキの思い出が増えていく。
結局ドンキで少し買い物して外に出ると、日が暮れ始めていたので夕食を食べれる場所を探すことにした。レストランは少し高いので、現地の屋台がいいなと思ってウロウロしていると、それなりにたくさん屋台が見つかった。シンガポールは基本的に外食の文化らしく、路上に椅子が置かれてたくさんの人が夕食を取っている。
ちょっと怖い客引きに怯えて同じ場所を3周くらい回った末に、人通りの多い店で食べることにした。その店はだいたいみんな持ち帰りのようで、店先で食べているのは自分だけだった。
Mee Gorengという何となく聞いたことあるものと、蜂蜜レモンを注文する。
Mee Gorengは辛い海鮮やきそばだった。食べてみると蒙古タンメンくらいの辛さでうまい。だが食べ続けていると暑さと辛さと量でかなりキツくなり、食べるペースが落ちてくる。背中に「一番搾り」と書かれたTシャツを着た呼び込みのお兄さんが私が食べ終わるのを横目で見ているのを感じながら、なんとか完食した。はちみつレモンを買っていて本当に良かった。食べ終わった時点で胃の調子が悪いが、辛くてうまいものを食べるには多少の犠牲は必要だろう。明日の胃腸を信じて店を後にした。
2日目 シンガポールっぽいところへ
朝からうっすら腹が痛い。6時すぎに起きて外を見ると、まだ深夜のように真っ暗で、日の入りが遅い分、日の出も遅いようだ。昨日のMee Gorengの名残を感じつつ、ホテルの朝食に向かう。
日本で見ない珍しいものが並ぶバイキングに浮かれてしばらく見て回ったが、結局日本のホテルの朝食みたいなものを取ってしまった。
魚の煮物みたいなものだけ現地っぽい味がしておいしかった。シーザードレッシングと思ってかけた白っぽいドレッシングはほぼヨーグルトであまり口に合わなかったので、明日は違うドレッシングにしようと思う。
朝食後MRTで仕事先に向かったが、朝からものすごく暑い。シンガポールはMRTと呼ばれる電車が発展しており、どんな場所でも10分ほど歩けば駅に着くようになっているらしい。非常に便利な立地なのに降りる駅を間違え、酷暑の中一駅分くらい歩いて汗だくになった。仕事先の人たちにもなぜタクシーを拾わなかったんだと驚かれた。
心をすり減らして仕事を終え、仕事先の人に有名な観光地に連れて行ってもらった。おすすめの激うまバクテーもご馳走になった。肉はもちろん、パンみたいなのをスープにつけて食べるのがめちゃくちゃおいしかった。スープが少し減ると、店員さんが薬缶に入れた追加のスープを注ぎに来るので、断るまで無限にスープが増える。牧のうどんみたいなシステムだった。
バクテーを食べたショッピングモールがかなり大きく、しばらく店内を散策した。デカいイオンモールみたいな雰囲気で絶妙に馴染む。日本の店も多く、やっぱりドンキも入っていた。ドンキはシンガポールでも人気の店らしく、初めてシンガポールにドンキができたときは人がたくさん押し寄せたようだ。スイートポテトが有名らしい。焼き芋のことだろうか。
デカいショッピングモールを楽しんだあとは、そのまま歩いてマーライオンまで向かった。近くにはドリアンを模したシアター、食事ができる観覧車、カジノや大きなビルがたくさんあり、歩いているだけで楽しい。
マーライオンはがっかりスポットと言われているが、夜のライトアップのタイミングで来ると本当に綺麗だった。ちょうどカジノの向こうから月が登ってくる時間帯で、ライトアップされた観覧車とカジノの横に大きな月が見えた。きのうがスーパームーン的な日だったらしいが、十分すぎるほど美しい。平日でも観光客が非常に多く、人工的な街並みなこともあり、近未来が舞台のゲームのようだ。いるだけでリッチな気分になれる。
観光を楽しんでホテルに戻り、まほやくを開いて一息つく。観光楽しい気持ちと明日以降の仕事大丈夫か…の気持ちで落ち着かないが、願掛けにホームをレノックスにして旅の無事を祈ることにしよう。
3日目 飯がうまい
時差は1時間だけと言えど、まだこの時間か…と何となく得した気持ちになりながら起床する。
朝食にはシンガポール名物の中華粥などを食べた。トッピングがたくさんあり、とりあえず全部載せてみたが、全部味がしっかり付いているため、お粥自体に味がなくても混ぜて食べると塩気がきいておいしかった。お粥なのに搾菜やピータン、フライドオニオンなどの食感があるものが入っているのがおもしろい。
前日のことを思って憂鬱になりながら仕事に向かう。やはりだいぶ仕事で頭を悩ませたが、気分転換に昼休みに買い物に連れて行ってもらった。途中食べたピリ辛のラーメンみたいな麺がかなりおいしかった。肉と思って食べたものが油揚げで、シンガポールで出会うと思ってなかったので不思議な感じがした。
買い物では実家へのお土産を買った。おすすめのお菓子を教えてもらい、3パック買うと安くなるという売り文句に乗せられてデカいクッキーパックを3つ選んだ。シンガポールでは3つ買うと安くなるシステムはよくあるらしい。
昼からの仕事も神経をすり減らしたが、夕食で食べた中華がめちゃくちゃおいしくてストレスが全部飛んだ。ペーパーチキンが有名らしいが、青菜のガーリック炒めみたいなやつもかなりおいしく、これだけで一生酒が飲める味がした。やはり中華は強い。ペーパーチキンはクッキングシートのような紙で包まれた鶏肉を醤油と生姜で甘辛く煮たもので、日本人に馴染みのある味がした。
飯の話ばかりになってしまうが、個人的にご飯がかなりおいしくてどうしても食べたものの話をしてしまう。普段朝食をほとんど食べないので、明日は何を朝食で食べるか考えながら寝るのが楽しい。
4日目 マレーシアへ
今日はシンガポール滞在最終日だ。前日遅くまで歩き回っていたので、朝が眠すぎる。朝食を食べないのはもったいなさすぎるので、無理やり起きて朝食会場に向かった。いろいろ迷ってシーフードチャーハンと良さげなおかずを選ぶ。焼きトマトとチャーハンがおいしかった。チャーハンはとくに気に入ってしまい、二度と食べれないかもと思っておかわりまでしてしまった。
午前中はシンガポールで仕事をして、午後からタクシーでマレーシアに向かう。運転手は人の良いお兄さんかなり車の運転が荒くてハラハラした。とんでもない速さで車がすぐ横を通っているのに周りのバイクたちは1ミリも気にしていない。
マレーシアに入ると急に熱帯雨林のような木々が増える。シンガポールは都会的なリゾート南国だったが、マレーシアはまた違った南国らしさがある。
2時間ほどでホテルに到着し、チェックインしていると旅行者の滞在はホテル料金と別で一泊あたり10RMかかると言われ、日本では聞きなれない法律で驚いた。
夕食はニョニャ料理というものを食べに行った。マレーシア料理と中国料理の中間のような料理で、マレーシアの中でもマラッカというところ以外ではあまり食べられないらしい。
ターメリックライスとアヤム・ブアクルア、ルンダン、魚とパイナップルの煮物、さつまいもの葉のスープなど、ほとんど初見の料理が並んでワクワクした。どれもおいしかったが、アヤム・ブアクルアという鶏肉とマングローブの木の実を煮込んだものがおいしかった。
食後はホテルの近くのショッピングモールに行った。イオンのような安心感がある場所で、ローカルのいろんな店が入っていた。
一番ワクワクしたのがスーパーだ。いろんなサイズの唐辛子やデカいドリアンが大量に並んでいたり、魚介もいけすのようなものに入ってたくさん売られている。野菜も肉もすごい量で売っていた。現地のスーパーめぐりがしたくなるくらい楽しい。
明日で滞在は最終日だ。初日の杞憂が嘘のように楽しんでしまっている。もう少しいたいくらいだが、そう思う内に帰るくらいがちょうど良いのだろう。
5日目 さよなら南国
マレーシアのホテルは各部屋にタンブラーが置いてあり、エレベーターの近くにある給水機で補給するシステムだった。水を入れてみるとかなり暖かい。
朝食会場に行くと、シンガポールのホテルとは打って変わってカレーっぽい料理が多かった。とりあえずカレーは全部ちょっとずつ取ってみる。一つだけ煮干しのようなものが入っためちゃくちゃしょっぱいカレーがあり、米なしでは食べられないほど味が濃かった。ほとんど朝食を食べない人間だったのに、4日間毎日ガッツリ朝食を楽しんだ。
マレーシアでの仕事もなんとか無事に終わる。想像していたより上手くいってほっとした。昼食にはマレーシアのバクテーを食べた。シンガポールのバクテーは牛肉でスープに胡椒が効いていたが、マレーシアのは豚肉でスープは漢方っぽい味がして辛いスープだった。バクテーの話になるとシンガポールとマレーシアどちらのが好きなのかという話になるらしいが、個人的にはマレーシアのバクテーが好きだ。
夕食はインドネシア料理だった。オレンジ色の謎のフルーツジュースを頼んだが、バナナみたいな味がしておいしい。料理が運ばれてくると想像の数倍豪華で驚いた。レモングラスに肉団子のようなものを巻きつけてあるものは、最初レモングラスも食べれると思って噛んでいたが、周りだけ食べるものだったらしい。一番美味しかったのは魚を揚げたもので、なんの魚かわからなかったが白身がふわふわでおいしい。フライドチキンのようなものは、上に載っているソースがめちゃくちゃ辛く、それを触った手で口の周りを触ってしまい、しばらくヒリヒリして痛かった。
マレーシアで夕食を楽しんだ後はタクシーでシンガポールの空港へ向かった。その日はシンガポールが祝日だったので道路が渋滞かもと言われていたが、ラッキーなことにそこまで混んでおらず、1時間半ほどでチャンギ空港に到着した。
手荷物を預けて空港の中を散策する。空港自体がとても広く、いろんな店が入っている。シンガポールではデートスポットにもなっているらしい。
Jewelと呼ばれる噴水のようなものがあると効いたので向かうと、デートスポットになっている理由がよく分かるほど綺麗で大きい。
Jewelを見た後は飛行機の時間までかなり時間があったため、店をぶらぶら見て回ってお土産を買ったりした。本屋も入っており、かなりおもしろそうな話の小説があったため買ってしまった。表紙も良い。24時間以内に死ぬ2人が最後の友達として出会う話のようだ。こういう話に弱すぎる。
フライト中に読もうと思っていたが、夜中のフライトで電気を消されてしまったのと、自分もかなり疲れていてほとんど寝ていたので読めなかった。寝て起きてを繰り返していると、4時ごろに朝食が運ばれてきた。何種類か選べたようだが、オムレツと日本食しか聞き取れなかったので、とりあえずオムレツを選ぶ。中にかなり伸びるチーズが入っており、付け合わせのジャガイモと一緒に食べるとおいしかった。
朝食を食べるとまたすぐ眠くなり、寝ている内に日本に到着する。諸々の審査を終えて空港を出ると、ほどよい風と過ごしやすい気温で嬉しくなった。あとでTwitterを見て知ったが、その日は絶好のお散歩日和だったらしい。地下鉄に乗ってJR線で乗り換えると、馴染んだ風景が見えてようやく日本に帰ってきたのを実感した。馴染み深すぎて逆に南国にいた5日間が先ほど寝ている内に見ていた夢のようだったが、この日記にしっかりと5日間の記録が残してあるので、現実だったんだろう。
電車に揺られて家に帰る。荷物が多すぎて人が多い電車に乗るのは憚れるため、急行ではなく各駅停車の電車に乗ってのんびり帰ることにした。窓から見える日差しが優しい。シンガポールでも毎日電車に乗ったが、南国ということもあって窓から見える景色も常夏だった。
今回は出張で行ったため、仕事後の夜しか観光できなかったが、現地の人たちに案内してもらったこともあり、十分すぎるほど楽しんでしまった。いつかプライベートでも行ってみたい。とくにマレーシアはほとんど飯の記憶しかないので、いつか観光も行ってみたいと思う。いい旅だった。