時の流れは本当に速いもので、あと数日で今年が終わる。自分の家の大掃除を5割くらいの完成度で諦め実家に帰省したところ、父と弟が物置部屋の大掃除を完遂していた。同じ釜の飯を食べてきたというのに、大掃除に対する意識がこんなにも違うのはなぜだろう。焼肉でも奢るから私の家も大掃除してくれないだろうか。
随分すっきりした物置部屋を見て感心した翌日、少し遠出して買い物に行く父に付き合い、昼食でうどん屋へ入った。父はそば、私はうどんを頼み、配膳されるのを待っていると、そういえばと言って父が数枚の商品券を財布から取り出した。どうしたのだと話を聞くと、物置部屋を大掃除しているときに、母の遺品から出てきたらしい。私の母は10年ほど前に他界しているため、少なくとも10年以上前の商品券である。
今日の夕飯の刺身を買うときに使うと言う父に、まず10年前の商品券が使えるのかと商品券をよく確認したところ、期限の記載はない。とりあえず店に行って使えるか確認してみようと、うどん屋を出て地元のスーパーへ向かうことにした。
ジャスコが無理矢理イオンになった、昔の趣を残したままの地元のスーパーに到着し、店員さんに商品券を見せたところ、二つ返事でOKが出た。10年前から商品券のデザイン変わっていないのか。絶対にバックヤードで確認が入るだろうと思っていたので拍子抜けしたが、問題なく使えるならラッキーだ。ありがたく商品券を使わせてもらい、夕飯の買い物を済ませて家に帰った。
そういうわけで、今日の夕飯には父が言った通り刺身が並んでいた。何気なく食卓に置かれた刺身が、10年前の母の商品券で買ったものだと思うと、何ともむず痒い気持ちになった。10年ぶりに母から何か買ってもらったような心地がして、10年前の子どもの自分が無邪気に喜び、今の大人の自分が少し照れている。
実際に買ったのは父だが、酒が入って少し感傷的になった私は、嬉しいような、悲しいような、懐かしいような気持ちがして、久しぶりに生前の母との思い出を懐古した。
年の瀬に母からの思わぬ贈り物が見つかったのだから、今年は家族にとって良い一年だったのだろう。もう買ってもらってばかりの年ではないので、明日は母の好きだったお菓子でも買いに行こうか。
そういえば、母は辰年生まれで、ちょうど来年年女だ。きっと来年は、母にとっても良い年になるだろう。