塩味のアイスもあるからね、ってそういうことではなく。
多くの人が「甘い」と感じるあのバニラのアイスクリームの話。あくまで、「たとえば」の話だけど。
先日、X(Twitter)のスペースでこんな議論が展開されていて。
「だって、アイスクリームは甘いじゃん。アイスクリームを塩辛いって、ロジカルじゃなくない?」
「うーん、そうなんだけどさぁ」
「あ、塩味のアイスの話をしてる?たしかにあるよね」
「いや、そっちじゃなくて。みんながよく知ってるあのバニラアイスの話」
「えー、じゃあそれはロジカルじゃないよねぇ?事実としてアイスクリームは甘いのだし」
「そうなんだけど、なんか、そういうことじゃないんだよなぁ」
あくまでたとえ話です。本当にアイスクリームの話をしていたわけじゃなく。要は「普通に理屈を積み上げたらこうなるじゃん」という人と「まあでもそうじゃない人もいるんだよー」という人の会話。
ときに、自分のことを「ロジカルだ」という人のなかには少なからず「自分の感覚をロジカルっぽい感じで押し付けてるだけ」の人が多いなぁ、と感じる。
そもそもロジカル、いや、日本語にしよう、「論理」とは思考や表現のスタイルであって「感情」と二律背反するものではないと思うんですよね。
ラーメンを食べていて「うまい!!」とだけ表現するか「この煮干しがとことんまで効いたスープに、だからこそのこの太麺。加水率も高く、時間が経ってもスープを吸わずに麺は麺としてドシっと迎えるこのバランス。最高の一杯だ」と表現するか。
どちらも「このラーメン、うまい」がスタートであって、それをどう捉えてどう表現するか、の違いでしかない。
感情は感情であり、論理は論理であり。
たとえば、とある高校生の女の子が一生懸命アルバイトして、お母さんに誕生日プレゼントを送るとして。
「お母さん、これカワイイと思ったから買ってきた!」とエプロンを渡すのと、
「お母さん、いつもいつも私にお弁当つくってくれて、朝から大変なのに、お母さんありがとう。いつもずっと使っているエプロン、もうボロボロだし、いつも身につけてるものだから可愛いエプロンで少しでも毎日が楽しくなったらいいな」とエプロンを渡すのと。
どちらの子だってお母さんのことを大切に思ってプレゼントを選んだことに変わりはないんですよね。
やっぱり感情は感情であり、論理は論理でしかなくて。
僕は、人間はすべて「感情」だと思うんですよね。どんなに論理を紡ごうが、結局は最初も最後も「そうしたいか、したくないか」でしかなくて。それをどう捉え、どう考え、どう表現するかに「論理(的)」か「感情(的)」かがあるだけで。ラーメンが美味かったか不味かったか、お母さんを大切にしたいか、原点はそれだけで。
アイスクリームを塩辛いと感じる人がいたとして、それはそれ、でしかないんですよね。それがまちがってるとか、ロジカルじゃないとかいう方が、実はロジカルじゃなくて。
その人は、
アイスクリームを食べると、
"塩辛い"と感じる
言ってることはこれだけで、これにロジカルも何もない。もし、これに対してロジカルに捉えるなら、(論理展開のスタートとして)「その人は、そう感じている」と捉えることこそが、ロジカルで。
「アイスクリームって塩辛いじゃん?」
と言われれば、それは否定する。否定するのがロジカルで。「〜じゃん?」というのは同意や賛同を求めているわけで、その多くは「多くの人はそうじゃん?」という意図を含む。とすれば、それはおかしい。世間の多くの人はアイスクリームを「甘いもの」と捉えているから。
だけど、「私はアイスクリームって塩辛いと思うんだよね」と言うなら、それはその人にとってはそうなのだから否定する意味もなく、ロジカルというならば「そうなんだね」と受け取るのがロジカルなリアクションだと思うわけで。
もしかしたら、その人は味覚がだいぶ人と違うのかもしれない。人々が「甘い」と感じる成分に対し「塩辛い」と感じる味覚の持ち主なのかもしれない。
もしかしたら、その人は「甘い」のことを「塩辛い」と教えられて育ったのかもしれない。その場合、実は感じてる味覚は同じで、それの呼び方が違うだけなのだけど。
どうなのかは、わからない。
また違う、べつの何かがあるのかもしれない。
でも、とにかく聞かないとわからない。
その人に。
ロジカルや論理は思考や表現のスタイルであり、他人に押し付けるものではないと思うんですよね。
むしろ、自分のわからない「その人」の何かを紐解くためのスキルが「ロジカル」であって。
話の最初から「普通、それはおかしいだろ」という人は、たぶんロジカルじゃない。だって、まず「人の話」という「事実(ファクト)」に向き合ってないもの。
「へぇ、そうなんだ。なんでそう思うんだろうか?」
ロジカルであればこそ、このフレーズから入りたいですよね。
なるだけたくさんの人の価値観を受け入れられるように。