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多才声圧オモシロヤニカスミームおじさんこと佐伯イッテツ、渾身のヴィランボイスを聞きました。
何様もいいところだが一言目に浮かんだのは、「こいつうめえ!」
芝居の上手さや解像度の鮮明さは仲磨の皆さんはご承知の通りだろうが、自分が今回感じたのはシナリオのうまさ。
驚くべきことに、このボイス、5分しかない。5分ですよ。皆さん、15年分ぐらいのドラマを背景に想像したはず。
それくらい、言葉一つ一つが的確で、そこで表現できないものは芝居に託し、効果音をのせ……。とても良質な五分間のショートアクトだったと思う。演劇の練習で使えるってこれ。めちゃつえーで回し読みしてよ。
さて、このボイス、ヒーローものとしては最近の流行りであるところの「旧ヒーローの敗北」を描いている。
飄々としたこのヴィラン佐伯は、戦いを遊びと称する類の戦闘狂キャラ……かと思いきや、実は、自分の理想とする正義のため、「倒されるべきもの」として全力で悪を貫いていた。それが、悲痛な叫びでもって聞き手に明かされる。
その理想像にそぐわなくなった旧ヒーローは、もはや佐伯の世界にいらない。だから冷めた声で淡々と自決を促す。しかも、ちゃっかり外堀を埋めて、ヴィラン佐伯がヒーローの命と引き換えに約束を守ることに賭けるしか無くした状態で……。
そして、絶対的ヴィランは、約束なんて守らないのだ。最悪のクソ野郎である。
けれども、結末部でさらに「長年の友」という言葉が発せられると、途端にここまでのクレイジー理想ヒーロー厨のヴィラン佐伯の姿に一抹の物悲しささえ抱いてしまうのはオタクの深読みだろうか。理想のヒーロー、好敵手が老いさらばえ敗者になってしまった悲しみ。失った友との約束のむなしさ。これらの悲しみと失望と怒りをぶつけるように、または新たなる絶対的ヒーローの登場を祈るように、ヴィラン佐伯は悪を執行し続けるのだろう。
こんなことを言うと野暮だが、41歳になれた佐伯イッテツと、21歳のままの佐伯イッテツの物語かもしれないと思った。
この辺りのストーリー、そしてヴィラン佐伯の感情ジェットコースターが豊潤な演技力でひしひしと胸を打つの感ずるにつけても、うまいな〜〜と思わされるのである。
あと声優のような磨き上げられた美しい声じゃなくて吸う人特有のざらっとした声なのも良かった……というのは好みの話か。
そして、これ自分が佐伯に沼った遠因でもあるんだけれども、こういう創作の場に引きずり出すと、この人の奥深い教養、創作物への興味関心、客側の感じ方への理解度をすごく感じさせられる。そしてそれをさらっとアウトプットしてきて、やっぱすげえモノ識ってんな〜〜〜、と、思う。フィルマークスと毒煙を常用してるだけある。おれも本とか読まなきゃな………。
個人的には、旧ヒーローが自決する道具として拳銃らしきもの与えるところが好き。火器ですよ。ヒーローに一ミリでも勝算があったらこんなもの渡さないんです。老いぼれの旧ヒーローなぞ簡単にねじ伏せる自信があるのか、はたまた、旧知ゆえに、かれが他人のために自決することを確信していたのか……。まあそんな物騒な言葉は一つも書いて(収録されて)ないんですけどね。全年齢グッズだし。全部オタクの妄想ですよ。ガハハ。
ついでにEXも。↓
Twitterでみんな言っていたけど、また別の人出てきたな!?
平和の象徴たる白いハトが飛んでいってしまった時点であっ…と思ったけれども、そこから先いつまでも佐伯の声が優しいのを聞いて、ちい◯わみたいにぶるぶる震えながら、"執行"の時を待ち、最後のセリフを聞いて満足して倒れることしかできなかった。そういうやつもくれるんだ……。ありがとう、救助は結構です。
本編?無印?が信念の絶対的ヴィランだとするなら、こちらはナチュラルサイコヴィランである。吉良◯影である。たぶんEXの世界にはヒーローなんていないし、いてもこの佐伯が見つかることなんてなく、穏やかに優しく最悪であり続けるんだろうと思った。
絶対的ヒーロー演ずる絶対的ヴィランに感謝。