文章を読め、言葉を知れ。

遠乃いつか
·

 『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』というゲームに「アオキ」というサラリーマンのキャラクターが出てくる。ジムリーダーでもある彼と勝負した後に、一緒に食事を取り、奢ってもらうイベントが入るのだが、そこでこんなセリフが出てくる。

「ここの食事は味があってうまいんです」

 普通だったら「『味わい深い』『趣深い』という意味の「味がある」の表現を食事に用いるんだ~、面白い言葉遊びするじゃ~ん!」となる、べきはずのところだ。(ちなみにアオキさんはこれ以外にもちょくちょく面白い言葉遊びをするユニークなキャラクターだ。プレイしてない人は是非実際に遊んでみてほしい。)

 だが、SNSの感想や動画投稿サイトの実況などを見ていると、

「料理なんだから味はするに決まってんだろw 何言ってんだこいつw」

「アオキさんって味覚障害とかなのかなぁ……?」

という反応がある。割と、結構な数、ある。

 え!??!?!??!??! みんな「味がある」という慣用句を……知らない!??!?!??!?!??!

 すごく驚いた。しかもこれ、小さい子どもとかじゃなくて成人した大人が言ってる。え? そんなことある???

 この現実を目の当たりにしたとき、私は「日本語ってこうやって廃れていくんだなぁ……」なんて無駄に主語の大きいことを思った。そのくらい衝撃的だった。

 つい先日も、成人のアカウントが「調べものしてたら『白皙の美貌』って表現があるって初めて知った!」と言っていて「嘘だろ!?」となった。さすがにこれは嘘であってほしい。成人まで「白皙の美貌」を知らないでどう生きてきたんだ。

 「『オタクにしか読めない漢字w』って『東雲(しののめ)』とか『不知火(しらぬい)』と挙げるやついるけど、普通に一般常識だろ」という意見を見かけたとき、私はひたすら頷いた。そうだよ。オタクじゃなくても最低限の教養があれば読めるよ……! でも今時のオタクは「味がある」や「白皙の美貌」を知らないのだから、今時の一般人の教養もそのくらいなのかもしれない。

 頼むからみんな文章を読め。言葉を知れ。そしてついでに読解力を磨け。

 日本人ってこのまま「字の読み書きはできるけど、言葉は知らないし文章を理解できない」状態になっていくのかな。