妄想する葦

遠乃いつか
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 数年前からVtuberにハマって、配信をよく見るようになった。その中で、いわゆる「推し」という存在もできた。

 私は俗に言う「箱推し」ができないオタクで、推しの同期(同時期にデビューした同僚たち)にはさっぱり興味がない。彼女らにトークセンスを感じないからだったり、単純に声が好みではなかったり、理由は様々ある。

 「オタクは関係性が好き」という通説があるように、箱推しのオタクは意外と多く、私のような単推しは若干肩身が狭かったりする。

 私の推しと同期は趣味嗜好や年代などもかなり違う。そのため、仲が良くない、シナジーがないと思っているオタクもいれば、同期なんだから仲が良くて当然だと思っているオタクもいる。

 私は「一定の需要があるから同期で集まってコラボ配信をしてくれているけれど、実際プライベートではそこまで親しくはしていないだろう」と思っている。そして、似たような意見のファンを見かけたこともある。その意見に、こんな反論がついていた。

「あの子たちは仲良しなんだから何でも話し合ってるに決まってるでしょ! 勝手な妄想で不仲にしないでよ!」

 笑ってしまった。すごい矛盾で。

 勝手な妄想で推したちを不仲にするな、と言いつつ、同じ口で、自分も勝手な妄想で推したちを仲良しだと決めつけている。すごい。「命を大切にしないやつなんて大嫌いだ! 死ねばいいのに!」構文レベルの矛盾! 何が一番すごいかって、この人は多分、自分が矛盾していることに気がついていないところ。

 もちろん、勝手に他者の関係を不仲だと妄想することはよろしくない。でも、勝手に仲睦まじいと妄想することだってよくないだろう。

 上記の意見の人は、「他のファンは『不仲だという妄想』に憑りつかれている妄想に憑りつかれている」ように見える。何だこの地獄のインターネット妄想マトリョシカ。

 まあ、結局真実は定かではない。本人たちにしかわからないままだろう。生身の存在を推すというのはこういう難しさがある。

 私たちはきっと今後も身勝手に、妄想で推しの不仲を疑ったり、妄想で推しの仲の良さを尊んだりしていく。うーん、気持ち悪い。やっぱりオタクって早く全員滅びた方がいいな。