自分のために指輪を買いました

とりば
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いわゆる「ドラえもん指」に近い自分の指が昔から嫌いだった。世のすらりとした細長い女性の指に強く憧れた。大学卒業後、患った病気の薬の副反応で太ってしまってからは、益々指がコンプレックスになった。

そんな私が30を過ぎた頃からネイルにハマりだした。それからなんとなく、自分に無縁のものと感じていた指輪に関心を持ち始めた。指輪というと、恋人同士の愛の証みたいで気恥ずかしくなんとなく目を逸らしていた。しかしとある呟きで「自分と結婚するために指輪を購入した」というものを見かけた。

自分と結婚、魅力的なワードだ。(byシソンヌ)

私は結婚を諦め、自分一人で生きていくつもりである。パートナーや子供に注ぐべき愛情を、自分のために捧げようという決意だ。病気をしたからこそ、一度きりの自分の人生を護りたくなったのかもしれない。そう自覚し始めた時に、その呟きを見かけた。

自分へのプレゼントで指輪を買おう。そう心に決めてから私は指輪を探し始めた。

と言っても高いものは私のサラリーでは買うのは難しい。ほどよい値段で、しかし私好みのデザインを探すのは中々難航した。

元来指輪に興味を持たない人間だったので、どんなデザインがスタンダードなのか、ピンと来ないのだ。人から見て奇抜ではなく、しかし自分が満足できるデザインの指輪はどれだ……。

そんな時に見つけたのが、こちらの指輪だった。

私はトラが動物の中でも、昔から強烈に惹かれる生き物だった。幼少期にトラをモチーフにしたキーホルダーを買ったのを今でも覚えている。

トラがプリントされたシャツ、スニーカーも手元にあり、同僚からは「阪神タイガースのファンですか?」と尋ねられたこともある。この指輪を見つけた時、まさにビビビ(古い)と来てしまった。

シルバーは私の肌に馴染むカラーだし、何より抱き合うように円を描いているアムールトラが可愛すぎる。最寄りの店舗には在庫はなくオンラインで買う手段もあったが、実際この目で見てから買いたい!と思った。だって自分と結婚する指輪だから。

私は生まれてはじめて(!)ジュエリー店に足を運ぶ経験をした。店員さんにWebページを見せて、こちらの指輪を取り寄せていただきたいのですが……とお願いした。店員さんはそれはそれは親切だった。そうですよね、実際に指につけてみてから購入したいですよね、と私の我儘にも理解を示してくれた。在庫は他店舗から取り寄せてくれ、1週間後に届きますと案内してくれた。

そしてその指輪が手元に届いた。支払いをするときに身分証明書を提示したのは初めてだった。いかに特別な買い物なのかを実感させられた。「着けて帰られますか?」と笑顔で言われたが、「いや!勿体無いので包んでください!」と即答してしまった自分の貧乏人根性よ。心を落ち着かせるために最寄りのスタバに入り、こっそりと開封し着けてみる。うん、中々いいじゃないか。

私は自分の指がコンプレックスだ。だから写真は載せない。だけど、そのコンプレックスを少し愛せれるような、そんな指輪だ。私は自分を大事にするために自分と結婚する、その決意の表れなのだから。

@tori_tori
お笑いとかファッションとか