140字のポストだけじゃ足りない気がして、長文?をちまちま更新してみることにした。
私が『お笑い』というものにハマる経験をしたのは大学生のころだ。兵庫県の大学に通っていたこともあり、お笑い文化が自然に根付いた土地では、当たり前の現象だったのだろう。
しかし私がハマったのは、漫才でもコントでもなく落語であった。落語は、江戸落語(笑点に出ている噺家さんたちはみんな江戸落語に分類される)と上方落語の二つに分かれるが、私は後者に見事に沼ってしまったのだ。贔屓の噺家の落語会には、その舞台が大ホールだろうと小さなお寺であろうと足繁く通い、スタッフさんだけでなく噺家さん本人にも顔を覚えられるほど。年齢層が高いお客さんの中で若い子は珍しい、ということもあろうが、とにかく熱心なファンだった。
漫才、コントで言われる「ライブ」は落語の世界では「寄席」と表現し、いわゆる「単独ライブ」は「独演会」と呼ぶ。「落語というものは共感の芸である」とたまに言われることがある。寄席に通って感じるのは、お客さんと噺家たちの一体感である。
たとえば『地獄八景亡者戯』という一時間を超える大ネタがあるが、盛り上がる場面のひとつに閻魔大王の登場シーンがある。この時に噺家たちは閻魔大王の顔を表現するのだが、その表情をどうするかは彼らの腕の見せ所だ。ここで大王の威厳を感じ取った観客達は、噺家に大きな拍手をする。
「拍手」というのも落語の独特の文化ではないだろうか。スタンディングオベーションというものがあるが、落語は特に拍手をする機会が多い。いわゆるこれも「共感の芸」たる落語ならではであり、噺家がネタをしていても「面白い!」「素晴らしい!」と思えば随所で拍手を送る。それは噺家への最大の賛辞なのである。私はこの寄席の雰囲気がたまらなく好きであった。
大学卒業後、地元に帰った私はどうしても上方落語を聴く機会は少なくなり、自然と寄席には足が遠のいた。(今でも贔屓の噺家のDVDが発売されると買ってはいるが)その代わりにバラエティー番組だけは観れる限り全てチェックする、お笑い大好きOLになっていた。これも4年間、関西に住んでいた名残なのだろう。しかし特に贔屓の芸人は見つからず、例えるなら博愛主義のお笑いファンであった。M-1ですら「みんながんばれ」という態度で観ていた私が、シソンヌにハマったのは本当に突然の出来事であった。もちろん彼らの存在は知っていたし、番組に出演するたびに「面白い」とは思っていたが、まさかこんなにハマるとは思わなかった。まさに「沼」である。YouTubeに上がっていた公式動画のコントを全部観て、他のも観たくなりDVDも一気に注文した。「絶対に単独ライブにいつか行こう」とも決意した。
この感覚、情熱。それは大学生の時以来のものだった。
今年の12月、私の夢は叶った。『シソンヌライブ[douze]』を観に行くことができたのだ。正直、私は生のお笑いは「寄席」しか知らない。(ちなみに私の贔屓の噺家は吉本所属ではなかったので、恥ずかしながらNGKに行ったことが無いのだ)変なところで笑ってしまったらどうしよう、素っ頓狂な言動をしないように、と内心ひどく緊張していた。生のシソンヌは最高だった。本多劇場は狭いキャパのホールのため、どの席からでも二人の姿が良く見える。お客さんも良く笑い、私の緊張も次第にほぐれていった。
私の「癖」が出たのは、2本目のコントであった。長谷川さん演じる社長が小室哲哉の物真似をするシーンがあるのだが、それがもう絶品なのである。TKを知っている身としてはおかしくてたまらない。最後にもう一度その物真似を披露するシーンがある。やっぱり何度観ても見事なものであり、私は無意識に拍手をしてしまった。しまった、と思った。しかし私以外にも拍手をしている方がチラホラといた。この「拍手」を耳にした時、私は妙に感動してしまった。そして「私は今、生のシソンヌを観ている!」と心から実感した。シソンヌの二人がアフタートークで「今日のお客さんはよく笑ってくれた」と振り返ってくれたのも嬉しかった。
「共感の芸」は何も落語だけではない。コントでも言えることであり、私はシソンヌの「観客」でいて良いのだと、彼らに受け入れてもらえた気がしたのだ。
2023年もあと数時間で終わる。来年はシソンヌが出るライブには、出来るだけ行こうと決心している。地方住まいである上に、シソンヌはチケット争奪戦が激しいコンビなので、簡単なことでは無いのだが……。しかし久々に「お笑いにハマる」経験が出来ている今が、私はとても楽しい。お笑い関連のツイッターアカウント(どうしてもこう呼んでしまう)も初めて仲間もできたことは、まだそこまでSNSが普及していなかった大学時代には体験できなかったことである。まだ右も左もわからない初心者ファンであるから、皆様にはこれからも沢山のアドバイスをしていただけたらと思っている。
今年もお世話になりました。みなさんにとっても、シソンヌというコンビにとっても、良い2024年が過ごせますように。