四季は嫌い
でも気候に振り回されるのは好き
雨季が近付くと季節を忘れたフリをする
そして、「妙に外出時に傘を持ち出してるな」という発見から本能的に雨季を知る
雨と言えば母と行った心療内科での一件を思い出した
クリニックの待合室の前に
"ここに座らないでください"
と書いたテプラが四方八方全ての枠に貼られた傘立てが置いてあるのを見た
「いや、そんなに主張しなくても一目で傘立てって分かるよ…」
と思ったわけだけど、ある日 傘立てに座ってる人とがっつり目が合い意見を変えた
それから少し時は経ち雨の診療日
母はお気に入りの傘を当然のように傘立てに収めた
私もそこに何の疑念も無かった
が、診察が終わった頃にはその傘は盗まれ失われていた
そこで理解した
この傘立ては傘立てとして機能してない 椅子として使われるぐらいでいい
実際、その後 母は傘を手元に持ち歩くようになった
雨の日の記憶は気持ち程度色濃い
晴れ男だったあの人との記憶は すでにおぼろげ