はっきり言ってガックリ来た。ほんとうに、緊張感の糸が切れてしまった感じ。
私はジョジョの事は人並み程度の知識であるので2/7が作中大事な日にちであることは知らなかったが、主演俳優のオタクをかれこれ8年くらいはやっている立場なのでその視点からものを書きます。
2.5のフィールドでデビューした彼は最近活躍のフィールドがすっかり東宝系列に移っています。昨年2月には同じような2.5が主戦場であったキャストとともに帝劇デビューを果たしました。でも、仲良しの俳優仲間は主役キャストで、彼の役はプリンシパルキャストではあるものの真ん中ではない。それは絶妙に悔しく、「ああ。次はもう少し真ん中であれ」と思ったのは事実です。同じようなことを言ってくれた先輩俳優もいて、彼を応援する身としてそういう野望を持っていいランクの俳優に育ったんだなと期待しました。
その直後にジョジョのキャストが発表になって、主演ですって。びっくりしました。大好きな作曲家であるドーヴ・アチアがその曲を手掛けることも嬉しかった。本当に期待で胸がいっぱいでしたし、たくさんのオタク仲間がそのキャスティングをお祝いしてくれて本当に誇らしかった。うれしすぎて発表当日に喜びと応援の気持ちをありったけ詰め込んだファンレターを書いてお送りしました。私にできることはそれくらいなので。
そのあとも別の仕事がありましたし、そこからすべてがジョジョミュに注がれていたわけではないと思うし、それでもいくつかの媒体がインタビューしてくれた記事を読むと、研鑽を積んで準備していることが分かりました。
私がすることはチケットを確保することだけです。私は既婚者で子持ちのしがないパートの主婦ですのでそんなにお財布が潤沢ではないし、なにより出かけられる日はそんなにありません。ただ、それでも初日の2月7日夜公演、8年間見つめて応援してきた推しが初めて帝劇の0番でご挨拶をするその日だけは行きたくて夫の予定を確認していくことにしました。
舞台は毎日同じことをします。30公演とか、60公演とか。それでも、いくつかの節目の日だけは座長がご挨拶してくれるのが慣例です。私は、主演俳優として、彼に何かを言ってほしかった。「ありがとうございました」の一言でも、真ん中でスポットを浴びてニコニコして手を振る姿が見たかった。あの800人キャパの小さな代々木公園にかつてあった2.5専用の劇場で、まだなんだか落ち着かない様子で舞台の真ん中には遠い場所に立っていたその姿を見て惚れ込んだその日からは信じられないような大成長を遂げた様子を、見たかった。
センチメンタルに書いたけど、オタクのエゴです。見てよ!私の推しがこんなに立派!すごいね!と帝劇の出口で友達と大笑いして握手したかっただけです。
初日がずれることなんてもう数え切れぬほどの作品が経験したでしょう。チケットが無駄になった人もたくさんいます。わかる。でも、そこにはやんごとない事情がありました。どんなに本心からの嘆きで「なんだよ!どうしてこの回なんだ」と言ったとしてもそのあとには「コロナだもん仕方ないよな」「怪我だって。仕方ないね」と言えたはずです。
今、ジョジョミュにはそれがない。「準備不足で安全を確保できない」というそれだけです。何が原因で準備不足になったのでしょうか。私たちはその宙ぶらりんで意味不明な理由で劇場と興行主と私で結んだ約束を勝手には破棄された。私は約束で決まった日に決まった金額を支払ったからそのチケットを手に入れたのに、向こうは私との約束を守れないのはなぜでしょう。なんて勝手なんだろう。
悔しいのは今そのどこにもぶつけられない原因不明の不名誉なレッテルが作品に対して貼られたことです。彼のキャリアで燦然と輝くはずであった「帝劇主演作品」にはひどい泥が塗られている。期日までに仕上げられない興行であったという、前代未聞の泥が。それはきっとずっと消えない。ジョジョミュ?ああ、あの初日が遅れたやつでしょ、と。なんて不名誉なんだろう。頑張って真摯に取り組んでいたはずなのになぜ。
その嘆きは作品を何十年間も愛してきた人たちも同じです。大切な作品をあの主催に預けたらこんなことになった。どうしてくれると。
舞台オタクだって、こんなこと初めてです。そして、安くないお金を投じるこの舞台観劇を趣味とするものとして、緊張の糸が一気に切れるようなひどい脱力感の中にいます。あの日まで絶対に元気でいよう、絶対に仕事を終わらせて開演時間までに椅子に座ろう、絶対に、絶対に行くんだという、高揚感と緊張感が、一気に消えてしまって、どうしたらいいのかわかりません。
あんなにうれしかったのになぜ今こんなに悲しくさせられているのだろう。
私が今求めているのは興行主からの説明です。なぜこの高いチケットを払って楽しみにしていた機会が消えたのかを教えてほしい。カンパニーの誰かが衣装を燃やしたのでしょうか。誰かがけがをしたのでしょうか。大道具が壊れたのでしょうか。準備はなぜ終わらないのでしょう。
私は2月7日と2月25日のチケットしか持っていませんでした。初日と、最後の週末の仕上がりが見たかったからです。ずいぶん先になってしまった。私の気持ちがそこまでに軽やかになっていればいいけど、初日が消えた事実だけは消えない。
懐が痛んだわけではないので、まあ、遠征される皆様よりはずっと軽症です。遠征される予定だった方の懐が何かしら補填されたらいいなと思っています。そのあいた予定に他の舞台を見ようと、おいしいものを食べようと、消えない事実はきっとずっとつらい思い出になる。興行主はそれをわかってください。
恨みつらみでした。以上。