店員

とさ
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こじんまりとしたカラオケ店がある

常連というわけではないのだけど、ふと歌いたくなった時にそのカラオケの店に行く

店は古ぼけた建物の地下一回にあって、少し埃くさい匂いがする

だいたい、その店に行くのは夜遅くになるのだけどそのタイミングでお店にいる店員はいつも一緒の人だった

40代前後のおじさん。

受付の奥の方で、お湯を沸かしているのだろうやかんが音を立てている。おじさんが淡々と受付を済ませて狭いカラオケボックスに案内してくれる。

彼の人生はどのような人生なんだろうか、少し考える。なぜ、このカラオケボックスで働くことになったのだろうか?家庭はもっているのだろうか?深夜帯のシフトに入っていることが多いいがこのまま朝まで働くのだろう?

残念ながら、何もわからない。

興味があるからと言って、話しかけるわけにはいかない。大体、深夜の時間帯に一人でカラオケに来る自分も相手から見たら異質なものとしてみられているかもしれない。いや、それは自意識が過剰すぎる。普通に来るお客さんのうちの一人でしかないか。

そんな自分が、「あなたはどうしてこのカラオケボックスで働こうと思ったのですか?」なんて突然聞いてみたらどうなるだろうか?

彼は、答えてくれるのだろうか?

それもわからないし、多分聞くことはないだろう。

ちょっと羨ましいなと思ったりする、自分もこんな人のあまりこなさそうなカラオケボックスで文庫本でも読みながら店員をやりたいなと思う。(本当のところは自分がわからないだけでいっぱい仕事はあるのだろうが)

街の薄明かりの中で、すれ違うことのない人の人生が流れているのを感じながらてきとうに歌を歌った。

@tosa
ゆっくり歩く、水を飲む