2023年の7月に見た映画なんですけど、例えば。Aがある発言をしてBがAの両口角を引っ張る、捻り上げる時、Bが発する台詞としては「どの口がソレを言う」「◯◯などと言うのはこの口か」というのが妥当だと思うんですよ。それでね、わたし、その映画が、21世紀最高のこの「どの口がソレを言う」映画だったんです(意訳:『インディジョーンズPart5 運命のダイヤル』見ました)。以下、『運命のダイヤル』『ナイル殺人事件』二作、まためっちゃネタバレしていますので、未見のかたはご注意ください。
美しかろ、これはアイルランドの『ケルズの書』のカーペットページ
⭐️ ⭐️ ⭐️
『運命のダイヤル』冒頭、ヨーロッパ某国(ドイツのどこか?)、インディが英国の考古学教授と一緒に行動してて、すったもんだでナチスに捕まってベルリンへ行く列車に乗せられます。で。その列車には歴史的遺物が山と積まれていて、英国の考古学教授が「こいつら(ナチス)、世界の半分の宝を奪おうとしているぞ!」などとぬかs...や、言います。
残 り 半 分 は ど こ の 国 の 博 物 館 に あ る と
上映中、ずーーーっっっと、「お ま え が ゆ ー な ! !」と呪詛のようにつぶやき、せっかくの北欧の至宝を(ry
えー、今回のインディの敵役は、マッツ・ミケルセン演じるユルゲン・フォラーという天才科学者でして。元ナチスの科学者、戦後、アメリカに招聘されてアポロ計画に関わっている、という設定で(で、ロケットの研究をしつつ、アンティキティラのダイヤルも追いかけている、という…)。インディと敵対しているのに! 敵なのに! すごいぞ! 身体能力ほぼない! 元特殊部隊の工作員でもなく、傭兵でもなく、おそらく映画冒頭で、インディと出会って大立ち回りに巻き込まれるまでは、ずーーっと研究室に籠ってたタイプ! 歴代の敵役にはいなかった珍しいタイプ!(だけど、歴代の敵役のうち、顔の良さは一、二を争う)(争っているのは、四作目の敵、ケイト・ブランシェット様だ)(うん)メッセンジャーバッグを斜め掛けしていたりして、いかにも浮世離れした、ぼく象牙の塔の住人です!的にすごく可愛かったです。わたしにとっては、このフォラー博士、立場としてインディの敵であって、悪役でもなんでもないよね、むしろ本当の悪役は(ry
(わたし、文章を途中で投げるよ! ry で誤魔化すよ!)そんで、このお正月、ハリポタシリーズを見返していたんですが、その間に、ケネス・ブラナーの『ナイル殺人事件』も流し見していまして。これはクリスティの原作は読んでいませんが、前作(つまり1978年版のナイル殺人事件)をこれまた流し見したことがあって、だいたいの手口と犯人は知っている、という感じで流していました。ケネス・ブラナー版、冒頭の回想が1914年、本編が1937年のロンドンから始まります。まあ、いろいろあって、エジプトのナイル川をクルーズをする船に舞台が移り、そこで殺人事件が起こるのですが。
若い大富豪夫妻が新婚旅行として船に乗り込んでいます。で、その夫人が華やかなひとで、他の乗客たちにクルーズとエジプト旅行を楽しみましょうね!みたいなことを言う。
調律したピアノもあるし、あの〜〜ホテルから奪ってきたシェフもいます!
わかっている。1937年が舞台なら、インディ5作めの冒頭より昔だ(インディ5作目の冒頭は1944年)。そのころのイギリスなら、それなりに『太陽の没することなき大帝国』真っ最中! なのだろうな、それなら(おまけに大富豪の奥方なのだし)『奪ってくる』という表現もおかしくはない、違うな、『奪ってくる』という表現を普通に使う、……これかな、難しいね。その言葉を使う意識が、当時のイギリスでは普通だった、ということは知識としてわかっている(つもりな)んだけども、映画で、俳優さんが、楽しげに言っている、というのは、どきっ としますね。同じせりふを本で読むよりも、映像で見る方が、やっぱり印象が強いなあ。いや、じゃあ逆に、ブリテン本国、植民地、区別なく平等に接するキャラクターにすればいいのかというと、そうでもないよね。平等に接する、というのは、今、21世紀の感覚だから、よっぽど先進的なキャラクターとか、そういう設定でないと。いや、わかってはいるんだけどもさ。映画を見たり、本を読んで、その作品に、時代や国で、今の感覚では受け入れられないことがあって、それを消化するとか、やり過ごすとか、できればいいんだけど、できないものが(たぶん)わたしには山のようにある。
カフカの手紙でこういう文章があります。
本は私たちの中の凍った海を打ち砕く斧でなければならない。
(twでも見たことがあります。電子書籍のガジェットに “The axe for the frozen sea” と刻印しているひとがいて、かっこいいー!というようなRTを)この言葉に照らし合わせると、わたしの中の凍った海というのは、きっとすごく厚くて固い氷なんだろうな。今年も、たくさん本を読んで、がしがし氷を砕きまくりたいです。面白い本、良い本があれば教えてください。ぜひ。よろしくどうぞ。
『太陽の没することなき〜』ですが、Wikiを見たら、イギリスは現在でも太陽が没することのない国だそうです。(あくまで地理的に『ある領土で太陽が沈んでいても、別の領土では出ている』国で、覇権を有するという意味では該当しないとのこと)。