2023年読んでよかった本について〜『慈しみの女神たち』と『アイルランド建国の英雄たち』

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年末に、ツイッターで2023年読んで良かった本のハッシュタグとかあるじゃーないですか。それでだいたい毎年、振り返ってまとめているんですけど、ここにも残していこうと思います。以下、読んで良かった本です、順不同。ネタバレはありません。

  • 慈しみの女神たち ジョナサン・リデル

  • アーサー王宮廷のヤンキー マーク・トウェイン

  • 流刑の神々・精霊物語 ハイネ

  • 辮髪のシャーロック・ホームズ トレヴァー・モリス

  • シェイクスピアアンドカンパニイ書店 シルヴィア・ビーチ

  • 天使はポケットに何も持っていない ダン・ファンテ

  • 灯台へ ヴァージニア・ウルフ

  • シャーロック・ホームズ人物解剖図鑑 えのころ工房

  • 検証 ナチスは「良いこと」もしたのか 小野寺拓也 田野大輔

  • アイルランド建国の英雄たち 鈴木良平

  • ケルズの書 復元模写及び色彩と図像の考察 萩原美佐枝

  • 満ちみてる生 ジョン・ファンテ

  • デイゴ・レッド ジョン・ファンテ

  • 愛惜 アン・クリーヴス

  • ガス燈に浮かぶシャーロック・ホームズ 小林司 東山あかね

思い出した。去年の今頃は、↑一番上の『慈しみの女神たち(上)』を読んでたなあ。そう、22年の年末に、かの『夜のみだらな鳥』を読み終わって、はー、とひと息ついて、じゃー、次は何を読もうかな!とtwでつぶやいたところ、フォロワーさんから『慈しみの〜』いかがっすか!と教えて頂き。本が厚くて大きなこと、ナチスの将校が語り手でとてもつらい内容だということ、くらいしか知りませんでした。でも、必ず読もうとは思っていた作品だったので、じゃー、この機会に、と読むことにして手に取ったのだった。タイトルの『慈しみの女神たち』というのは、ギリシャ古典悲劇のオレステイアから取られていて、主人公オレステスのありようと、語り手であるナチスの将校アウエのバックボーンが重なり、両者の罪を許すのが『慈しみの女神たち』だと、わたしにはそう読めました。

と、年末に読んだ『アイルランド建国の英雄たち』これもツイッターのフォロワーさんに教えて頂いた一冊でした。この本はタイトル通り、建国、独立に尽力した革命家、指導者について書かれたもので、著者鈴木良平氏があとがきで武田泰淳の『司馬遷――史記の世界』から以下のように引用しています。

歴史の動力となるもの、世界の動力となるもの、それが政治的人間である。政治的人間こそは『史記』の主体をなす存在である。政治的人間は世界の中心となる。

世界の歴史を書き、歴史全体を考えようとするものは、まず『人間』をきわめなければならない。(中略)戦争の歴史でもなく、『人間』の歴史が司馬遷の書こうとするところである。「人間」の姿を描くことによって、『世界』の姿は描き出される。

このような「人間」中心のアイルランド近代史の本があってもいいのではないか、と、鈴木氏は建国の指導者たちの論をまとめたそうです。わたし、このイースター蜂起について、ざっくりした流れはわかっている、くらいでして。2022年に『パトリック・ピアース短篇集』を読んで、こんなに優しい物語を書くひとが、蜂起の最高責任者で、樹立宣言を読み上げたひとなのか、 と、ピアースについて知りたいと思い、読んでみました。

今まで読んできたいろんな本の断片やら、その背景にあるものやら、そういうものがひらひらと浮かんで、捉えようと手を伸ばしてもなかなか捕まえられず、文章化にもできず、がりがりと机を引っ掻きながら読んでいました。何とかその『文章化できないキモ』のようなものの、せめて尻尾でもつかみたいと思っております。これはまた、もうちょっとしたら改めて読んでみよう。

自分は幼い頃からアイルランドを解放することを誓い、そのために努力してきた。その機会がやって来たので蜂起したのだ。負けたように見えるが本当は負けていない。戦わないことが敗北なので、戦うことは勝利なのだ。我々は戦いの伝統を受け継いで、未来にその伝統を託すのだ。

『アイルランド建国の英雄たち』パトリック・ピアス 軍法会議での発言

また別の記事で続きとして他の本の話、書くかも。ま、また、ゆるゆるとお付き合いくださいましー。

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せらと言います。読んだ本や、美術館&博物館で見た展示の記録などを書いて行こうと思っています。twとマストドンとblue skyに同じアカウントでうろうろしております。