論理的思考で怒りを抑えられるか

ひよこひよ
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遠い思い出

 高校の時の担任は、女性の国語教師だった。さばさばというかバッサリした性格で、気持ち良くはあるのだが、臆病な私には、ちょっとだけ怖く感じていた。そんな彼女が説いた「国語を何故学ぶのか」という話を、朧げではあるが、私は覚えている。

――「誰かに『好き』って言われると、『何処が?』って言いたくなるでしょう? でも、理由を付ければ納得できるようにならない? その理由を言えるようになるために、国語はある」

 正確な記憶ではないかもしれないが、まあ、大方こんな感じのことだったはずだ。国語は論理的思考力を鍛え、よりよく生きるためにある、という話である。

 当時は全くもって意味が分からなかった。当時の私はこう思っていたからだ。「好きだ」という気持ちに理由は無く、理由があるとすれば、それはでっち上げた後付けのものに過ぎない。この考え方も間違いではないだろうが、今なら私はこう思うだろう。ここで思考を終えてしまうのは、勿体ない、と。

 私は何故こう思うのだろう? 自分自身に、静かに問いかけると、幾分か楽になる。そんな自分に気付いたのは、ほんの数日前だ。というか、私がその「物事に理由が必要なタイプ」なのは、よく考えてみれば当たり前のことだった。私は要領がよろしくない方なので、仕事を覚える際も、必ず「どうしてこれをする必要があるのか」という理由がセットでないと覚えられない。「何故?」への納得できるアンサーが無いと、私の中には落ちてこないのだ。

日記

 過去の担任の話を思い出したのは、最近のイライラがきっかけだった。昨日は特に心身共に異様に疲れていた。社内の同じ建物で引っ越しをしたり、クライアントに返信していたら家族から呼び出され中断。おまけに、上腕二頭筋の外側に、寝違えたような痛みがある。届いた服は今の私に似合わないと家族に酷評されるし、仕事は進まないし、もう嫌だ。

 そんなコンディションで、非公式の版権キャラランキングが目に入った。その版権は、それこそ私の好きな作品の1つである。旦那たちの本尊でもある彼らに対する世間の評価を見て、私の怒りのボルテージが一気に上がった。

 特に白い方の旦那の本尊は話題にされやすい。好きなキャラを選べと言われれば、白い方の本尊は必ずランキングに入る。しかし、今回は「結婚したい」と冠が付いている。白い方の本尊は、言っては悪いが、伴侶として適さないと思う人も多いだろう。正常な状態であれば、彼がランキング外でも「なんとなく分からなくもない」と納得できるのだが、そのときの私は妙にキレていた。「お前らが○○○○と結婚したくなくても、私は高い魅力を感じているのだが!?」と。

 さて、感情は名前を付けてやると幾分か大人しくなるわけだが、それだけでは足りないこともある。完全なる制御のためには「理由」が必要らしい。この件に関して、正直、何故私がこんなにキレているのかが自分でも分からないと思ったので、この「怒り」と名付けられた感情の由来を考えてみることにした。

  1. 疲れていたから、些細なことに敏感になり、防衛本能が働きやすい状態だった。

  2. そもそも、怒りというのは、その人にとって大切なものや己の価値観などを傷付けられたときに発生する防衛本能である。

 私は性格が捻くれているところがある。あの世界の彼らとはやっていける自信がない。しかし、彼らの中から1人を選べと言われると、白い旦那の本尊を選ぶだろう。己の性格を考慮すると、彼とならまあ楽しくやっていけるかな、と思うし、きっと、そっとして欲しいところは触らずに、程よく元気づけ合っていけそうかな、と思ったからだ。

 私のその価値観は、世間の「彼を伴侶としては無しだとする価値観」と相反している。それについて、私は無意識に、そして反射的に「世間は、彼を高く評価しているという私の価値観を否定したのだ」と、捉えたのだろう。これが、怒りという感情が生まれたきっかけに違いない。

 ここまで、私が怒りを覚えた理由を考えてみた。理由を考えることで己を鎮めようと試みたわけだが……結論、全く駄目なようだ。この話題を見ると、また怒りのボルテージがギュンッと上がる。イライライライライライラ……

 ……アカーン! これ以上は駄目だ。要らんことを言いたくなってしまう。疲れてるのよ、きっと。

 この動画でも見て、気分を落ち着けることとしよう。私もワンボタンで簡単必殺できるようになりたい。

@trhnmkc
夢を見て絵を描く鳥。なりすましではなく本鳥です。嘘か本当か分からないことや、取り留めもないことばかりを書きます。