世界が崩壊したその後に至るまでの夢を見た。
舞台は、テクノロジーが高度に発達した地球。平和に暮らしていた我々の眼の前に、突如謎の飛行体が現れた。中から出てくるのは宇宙から来た侵略者。彼らは宇宙の様々な星からひっきり無しにやって来ては、地球を支配すると宣言してきた。最初は、ワンピースの空島編に出てくる神官みたいな一族、その次はミュータントみたいな風貌の生物……彼らは誰かに地球を取られる前に、自分たちのものにしてしまおうとしていたのだ。
その侵略者たちから己の住処を守るべく、地球の人類は、宇宙の技術を用いて、二人の少女を兵器とした。一人は、長い黒髪が綺麗な、クールな女の子。一人は、ふわふわした髪の、白く美しい女の子。彼女たちは死ぬことのない、食料の補給などもいらない、決戦兵器となった。
世間は彼女らに「意志を持たせるな」と言った。しかし、幼いころから研究に携わっていた夢の世界の私は、それを頑なに拒んだ。私の所属部署の研究員も、同意見だった。2人は確かに自我が薄く感じられるが、元々、彼女らはただの女の子だ。なにも、そこまで奪うことはないだろう、と。
彼女らは私と仲が良かった。他人の描いたものや、私が描いてみせる創作物に、2人は強く関心を持った。昔のVジャンプを見せたときの、黒い女の子の喜びようと言ったら、たまらなかった。白い女の子は、優しい目をしながら私の話に耳を傾けていた。彼女らが自律した確固たる意志を持つ、というのは、ほとんど私しか知らなかった。
私はその実験の過程で、半ば彼女らと似たような性質となったが、力を手に入れることはできなかった。だから、永遠を生きるこの命を使って、彼女たちが喜んでくれるようなものを作ろうと思ったのだ。
そんな私たちは、とある約束をした。
一方、侵略者は地球を荒らしていった。彼女らが手を伸ばせない場所は、ちょっとずつ滅んでいった。私たちの拠点も例外ではなかった。
私の上官は女性で、声優に例えると田中敦子さんの声がぴったりな性格の持ち主だった。とても厳しいが、私たちをいつも気にかけてくれていた。彼女は、私たちを隠すために、少数部隊で侵略者たちに立ち向かって行った。私たち3人に「いつかお前たちの描いた漫画が読みたいと思う」と言って、帰ってこなかった。
そうして私たちは、この戦いが終わったら、漫画に残そうと考えた。彼女の願いを叶えるために。
黒い女の子と白い女の子は、これまで以上に敵の殲滅に尽力した。しかし、どんどん優しい人たちは死んでいった。残ったのは、2人に心無い言葉を投げかける人間たちばかり。泣きたいのはきっと彼女たちなのに、私はいつも泣いていた。大丈夫、と、彼女らはいつも、私の頭を撫でてくれていた。
終わりのない戦いは、徐々に私たちの精神を摩耗させていった。
ついに地球側は、地球を捨てることを考えた。敵が大型の宇宙船でやってきたら、宇宙船を奪ってしまおうとしたのだ。そして、最後の決戦の日が訪れた。
地球側は、首尾よく宇宙船内の敵を倒し、宇宙船の奪取に成功した。私は、白い女の子に抱きかかえられていた。
その次の瞬間。黒い女の子が、地球の人間たちに光線を向け始めた。彼女の手から放たれるそれは、人間なら即死ものだろう。白い女の子も、私を抱えながら、次々に人間を屠っていく。それを眺めても、私は何も感じなかった。生き残った人間たちに、絶望していた。私たちもまた、精神的がすり減っていたのだ。
気付いたら、地球は私たち3人だけの星になっていた。人間や動物の居ない星には、侵略者たちも興味が無い。この状態なら、もし人間や動物が生まれても、しばらくは侵略者たちも攻めてはこないだろう。それに、私たちは死なないのだから。
荒廃しているのに、緑は豊か。昔行ったショッピングモールは、蔦で覆われていた。ベンチはまだ残っていた。手を繋いで、それに腰掛けながら、私たちは笑う。
「私たちの意志は、心は、発生するものじゃない。ここに存在していた。ずっと、ここにあったんだ!」
きっと、私たちはこの世界でずっと存在し続けるのだろう。私はできそこないだから性別は変えられないが、2人は形の一部を変えて生殖を行うことができる。人間を増やしたくなったら、増やせないことはないだろう。
私は、遠い過去を思い出していた。
――「ずっと一緒に居ようね」
黒い女の子と、白い女の子と、3人でそう指切りした。ずっと、3人で悠久の時を寄り添って生きていくのだろう。
ここで目が覚めた。今思えば、彼女たちは、なんだか旦那たちに似た女の子だった気がする。でも、旦那たちは喧嘩し始めるので、夢で見たこの世界よりも早く、地球が滅んでいそうだ。