グリコのSAPトラブルに見る日本企業のシステム開発の課題 〜発注者側のメンタリティ改革と内製化の必要性〜

ts_memo
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公開:2024/6/30

江崎グリコでSAPシステム開発プロジェクトが炎上し、主力商品のプッチンプリンが出荷できないという大問題が起きている。この原因が何なのかについて、今回は発注者側のメンタリティ、文化面から考察してみたい。

そもそも、システム開発は、ブロガーちきりんさんが提唱するように、「共同型プロジェクト」なのだ[1]。しかし、今回のケースの詳細はわからないが、発注者側は、お金を払って要件を開発側に伝えたら自分たちの役割は果たしたと思っているのではないかと思わせる節がある。

筆者も守秘義務があるので詳しくは言えないが、とある大型システム開発プロジェクトで、予算をつけて要件を伝えたあと、開発はシステムベンダーにお任せといった考え方のプロジェクトに遭遇した。案の定、プロジェクトは炎上、遅延に遅延を重ねていた。

平安時代の貴族は、穢れを恐れて軍事には手を出さず、武士にお任せということだったようだが[2]、現代のシステム開発にも通じるものがあるのかもしれない。ここでいう軍事は、現代における、実際の開発・コードを書く仕事に置き換えられる。

提案としては、大企業のシステム開発も外注お任せから内製化へと舵を切るべきだ。外注する場合も、システムベンダーの営業やプロマネ等の窓口の情報だけに頼らず、実際に誰が開発するのかというプロジェクトタレントマネジメントを発注者自身で行うことが重要になる。

先進的な企業では、この動きはすでに始まっている。グリコのSAPトラブルは氷山の一角に過ぎない。日本企業の多くが同じ轍を踏まないよう、発注者側のメンタリティ改革が急務だろう。DXの波に乗り遅れまいと躍起になるあまり、かえって泥沼にはまり込む事態は避けねばならない。システム開発の要諦は、発注者と受注者の真の協働にこそあるのだ。