今から数十万年後のこと ヒトの作った文明はあるピークを境に徐々に衰退を迎えたが、生きていくのに必要なある程度の技術と知識の蓄積は残っていた ボロボロになった生態系の中で、減りつつある人々はある選択をするそれは文明という要素を生態系の中に組み込むプロセスを行うこと つまり、崩壊寸前になった従来の生態系を、文明という糊でなんとか維持しようとしたということ 結果、技術や人口の衰退は加速したが、一応成功は治め、人類は生態系の維持とそのサービスの恩恵を受けられる社会構造を維持することにそれから更に数十万年後、衰退が止まらず絶滅状態になったヒトのニッチは空白になった そこを目指したのが、人類社会の活動で多くの種が絶滅しても尚細々と生存していた爬虫類・鳥類・哺乳類である人間が作り出した「文明が担う生態系」は多くの生物を保全するにはあまりに手遅れであり、また、文明というニッチと資源を奪い合うには彼らは数を減らしすぎた だがそれもヒトが個体数を維持できなくなるまでだった 多くの個体群が犠牲となったが、一部は「文明」というニッチに入り込むことに成功するヒトの作り出した文明ニッチに一度入れば、そこは出ていくことこそ叶わないものの、安定した生存がある程度保証される環境だった。数えきれない衝突を初期は繰り返していた各種同士も、ある程度の棲み分けや役割分担、そして自由意志によるそれからの解放を通して、共存する混生知的生物群となっていくいつしか、ヒトのニッチに入った彼らは、ヒトの行動や形態と結果的に収斂進化することとなった 我々が獣人などと呼称するような生物群「モロー」の誕生であるヒトは絶滅してしまったのだろうか ある説によると、ヒトは文明をニッチに還元する帰結として、再び変化の潮流に巻き込まれ、別の種を生み出した、それらはヒトとも獣人とも違う姿でどこかに生きているとされる 文明のピークに宇宙へと旅立った一群が、まだヒトの文明を残しているとも言われるいずれにせよ、氷河期の終焉と共に、この知的生物群による文明は、末永く続いていくかもしれない そして彼らもまた、ヒトと同じく文明ニッチの帰結として、生態系に回帰していくものなのかもしれない