弊社の奈良工場は、まもなく竣工後2年を迎える。竣工当初は場所の問題から採用が一番の懸念事項だった。しかし、ふたを開けてみれば、採用は思いのほか順調だ。結果オーライを含め、うまくいった取り組みをまとめてみる。
募集要項(前提条件)
職種:生産技術職(マシンオペレーター)
人数:年2名
求める人物象:
新卒及び30歳未満の中途
通勤可能圏内在住者
採用環境(問題点)
進出した奈良県五條市の人口は約3万人。さらに人口は毎年減少している。
近隣に工業団地が複数あり、製造業の求人倍率は非常に高い。
徒歩圏内に公共交通機関がなく、通勤には車かバイクが必要。
うまくいった取り組み
条件面の強みをつくる
認知度の低い中小メーカーは、競合に対して条件面でも見劣りすると、比較検討の土俵にすら上がれない。このため、近隣企業の求人票を可能な限り調べ、条件面の強みをつくった。
近隣企業を上回る給与に設定
本社工場のある大阪府と奈良県では、最低賃金が変わる。しかし、地域に応じた調整は行わず、本社工場と同じ給与テーブルを採用した。
勤務地限定の福利厚生を導入
通勤には車かバイクが必要となるが、ガソリン代を除く維持費は自己負担となる。このため、世帯主に対する住宅手当の支給や転勤無しの確約、スタッドレスタイヤの購入費用補助など、地域事情に応じた福利厚生を導入した。
ハローワーク担当者への営業
五條市の主要採用チャネルを調べた結果、ハロワークが圧倒的に強いことが判明。有料求人広告の出稿をやめて、ハローワーク担当者宛の営業頻度を増やした。
工場見学会の開催
ハローワーク担当者向けに工場見学会を開催。質疑応答の時間を長めに設け、過去の退職理由や怪我のリスクなどネガティブな話も包み隠さず共有した。
定期訪問の実施
毎月発行している社内報を通じて、進出後に現地採用した新入社員の近況を報告。また、求人票には載らない企業データをまとめた資料を配布し、求職者に展開してもらうよう依頼した。
新入社員へのフォロー体制強化
採用環境が厳しい地域のため、早期退職防止に向けた新入社員のフォロー体制を強化した。
本社研修期間の延長
本社での研修期間を従来の1ヶ月から最長3ヶ月に延長。最低限の知識や検査業務を身につけてから、現場配属する流れに変更した。
新入社員ごとに教育担当者を設置
新入社員に教育担当者をマンツーマンで配置。指導内容の相違を減らし、相談しやすい体制を整えた。
フォローアップ面談の実施
部署外の人事担当者が1ヶ月・3ヶ月・半年・1年の年4回面談を実施。新入社員の不安や不満を吸い上げる仕組みをつくった。
結果
竣工後1年9ヶ月で、新卒4名・中途1名の計5名が入社(うち、中途1名は退職)
竣工初年度に入社した高卒社員は、条件面の良さが応募のきっかけに。
上記社員から「働きやすい」と聞いた部活の後輩が翌年入社。別の新入社員からも、同様の理由で友人紹介を受け1名入社。
ハローワーク担当者経由の紹介多数。現在、今春卒業予定の高校生を選考中。
中途1名の退職はあったものの、新卒は初年度から離職ゼロを継続中。マンツーマンの教育体制が好評。
所感
地域によって採用のベストプラクティスは違う。中小メーカーでも、やり方次第では十分にチャンスはある。
今回のハローワーク担当者のように、自社を推薦してくれる協力者をどれだけ増やせるかは重要。「自力での採用」から視点を変える。
どのように採用するか以上に、入社後どのようにフォローするかは重要。安定採用のためには、社員満足度を高めて、リファラル採用の流れをつくる必要がある。