好きな作家さんを聞かれると、知名度もあって一番に「江國香織」と答えがちなのですが、そうすると大抵「恋愛小説だっけ?」と返されます。すべての作品を追っているわけではないのでなんとも言えないのですが、たぶん「冷静と情熱~」とか「東京タワー」のイメージが強いのかな。わたしは江國香織の描く〝孤独に潜んでる温度〟みたいなものが好きです。冷たかったり、温かったり、妙にぽかぽかしてたりといろいろなバリエーションがあるな~と思っているのですが、「ちょうちんそで」にはまさにぽっかぽかでしたね!中古本屋さんでたまたま「これ読んだことないな~」と手に取った本だったのですが本当に読めてよかった!
主人公は高齢者向けのアパートに住む50代の女性で、境遇もなかなかハードなうえに、あまり人と関わらないように生きています。だけど、小さいころから仲良しだった、今は事情があって会えない妹を想像し、その想像の妹と二人で一緒に楽しく過ごしているというちょっと不思議ちゃん。そしてこの想像の妹の天真爛漫さが、まさにぽかぽか!本当にかわいいし、お姉ちゃん思いだし、歯に衣着せぬ物言いも気持ちいいんですよ~。あと、たくさんの登場人物(家族だったり隣人だったり、どこかで関わりのある人物だったり)の視点によって構成されている一歩間違えれば複雑なお話なのに、江國さんの透明感のある読みやすい文章のお陰かまったく混乱しません!すごーい!それぞれの視点で語られる物語が、読み進めていくごとに繋がって解像度が上がっていく感覚は本当に圧巻でした。先が気になってあっという間に読んじゃった。まるで「いろいろあるけど、ここにいる人間の人生はまだまだ続いていくのです」と言われたような終わり方も生々しくて大変に好みでした……へへ…(悪い顔)
それから綿矢りさによるエールにこもった解説も大好き!彼女のフィルターを通した江國ワールド、言語化能力の高さも相まって神がかってますよ!解説本とか、読み物として売って欲しい~。