人生は足の痛みであれ

みなと
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今日は一日中パンプスを履いていた。だから帰る頃には足の指が痛くなって、歩くのをサボった。いや、本当はサボってない。だってサボってたら家に帰り着かないから。

目立つのが昔から本当に嫌いだから、歩く度に鳴る音が嫌だった。鬱陶しいわけじゃないけど、少しサイズが大きいから階段をおりる時とか電車に乗る時とか少しだけ大きな音が鳴る。だからそれを抑えるためにつま先を詰めて歩く、その結果足を痛める。痛みに耐えながら歩いていた時、人生もこんな風に痛みが分かればいいのに、と思った。よく人生は道に例えられるけど、本当に道が見えるわけじゃない。ただの比喩表現。だけど、慣れない靴を履いて歩くと痛みが生じるように人生にも痛みが存在したなら、きっと大丈夫な気がする。痛みで足が赤くなれば立ち止まるだろうし、血が出たら血を止めて消毒するだろうし。そうしたらきっと生きやすくなる気がする。上手く言葉に出来ないけどさ。

誰かの言葉をずっと憶えていたい。私は緊張する性分だから、会話をするのに精一杯で内容を覚えてることがない。憶えたいと思えば思うほど、それに靄が掛かってしまう。私の為だけに届けてくれた言葉を聴いたはずなのに、頭の中ではちゃんと存在してるのに、目に見える文字にした途端解らなくなって、その度に自分を恨む。嫌だなぁって。だからってことでもないけど、本当に伝えたいことは文字で伝えて欲しい。そしたら忘れることは無いからさ。君の声で聴けないことだけが残念だけど。

身近な人が居なくなって、ずっと人生のことについて考えている。なんかそんなことを話せる人と初めて会話して改めて思う。人生ってなんだろうなって。分からないよね。だから足の痛みみたいに痛みがあればいいのにって思ったのに。あなたと会うのが最後かもしれないなんて、嘘でもそんな事言わないで。私は貴方以上の人には会えそうにないからさ。貴方の隣に居たいくせに居たくないし、その気持ちを在り来りな言葉と関係性で終わらせて欲しくないし、私が貴方と出逢ったのはちゃんと意味があるものだって思いたいから。同じ表現で自分を表現する方法は、きっと私達だけに共通するものだし、それを馬鹿にされたくもない。だからって訳でもないけど、だから音楽があるんだと思う。会えなくなったって思い出す材料として音楽があればその人がそばに居てくれるような、安定剤のようなもの。きっとこれから私達はそうなっていく運命なんだと思う。悔しいけど、今度は私が貴方になりそうな気がして、嬉しいけどちょっと嫌だな、なんて。終わりが来るとか、今は考えたくないよ。