ブランクーシという彫刻家がいる。本当は画像を持ってきたかったが省略する。一般にギリシア彫刻などでイメージされる肉体への賛美や細かな造形への執着などはブランクーシにはあまり見られず、つるつるとした表面の、単純な構造をした彫刻が目立つ。
「眠れるミューズ」なんかは、眠っているのか起きているのかも判別しづらい曖昧な瞼の表現、髪も首も体もない最低限の情報だけが詰まった頭部の打ち捨てられたような雰囲気が印象的である。浜辺で腐るのを待つだけのヤシの実のような感じで、その主張の弱さ、意図された静けさには新鮮なものがある。造形に気を使ってなんぼの彫刻業界だと思っていた。便器をアートだとするマルセル・デュシャンと親交があったらしいが、ブランクーシはそれに比べて知名度が低い。家長むぎの配信を見なければ一生知らなかっただろう。
やはりアートにしてもなんにしても、知名度を手に入れるには一発ぶちかますというか世間に広がりやすい作品を作るほかないのかもしれない。
3月30日からアーティゾン美術館で日本初のブランクーシ展があるという。