差別……差別の話だった、と簡潔にまとめるのもどうにも作品に対して不誠実な気がして気が進まない。これが人間の証明というタイトルなのか。人間の……。
拭いきれない黒人差別と日本人差別と。
棟居は朝倉の後に見てるというのもあるけど真面目で正義感が強くて正統派にかっこよかった。最後、憎しみに引きずられて撃ってしまうんじゃないかって。あそこの場面は一番緊張感が走ってたかもしれない。お願いだから撃たないでくれってあんなにも願いを掛けることってなかなか無い。息止めてたと思う。
彼女のファッションショーの話。多分映画を観てるときに体感的にすごく長い間あのショーを見ていたような気がするのだけれど、正しく映画内で彼女の物語があのショーから始まりあのショーで終わっているといえるのかもしれない。棟居がデザイン大賞受賞発表直前のタイミングで彼女に息子の死を告げるのなかなかだなとちょっと思ったけれど、でもあのショーこそが彼女の夢で、その終焉を告げるにはあのタイミングなのかも。あとで言えばいいって話でもないけれど。
過去の因縁コンビである棟居とシュフタン。バーで大暴れする棟居をシュフタンが止めたりして何だかんだ良いコンビのように見えるときもあるけれど、それでも決して日米凸凹バディになりきらないのが良かった。根底にずっと壁がある。棟居の過去の記憶は相手に伝えないしずっと知らないままというのも良かった、良かったのかな。忌避する理由を伝えて、それで…。それでどうというわけじゃない。
最後息子を殺し失った母も死に父も死にそして刑事も死ぬわけだけれど。あの後味の居心地の悪さまで含めて凄く好ましい。(好ましいという言葉選びが正しいかは分からないけれど) かつて日本人を虐げた刑事が最終的に日本人を相棒として認めて友情を感じることができたけれど、その人も他の人間の現在の差別と憎悪によって殺される。
「日本人ひいきめ(Japanese lover)」って。愛の物語の傍らにずっと差別が横たわっていてずっと私たちと繋がっていた。
「あの麦わら帽子どうしたでしょうね」