【映画レビュー】死の天使 ヨーゼフ・メンゲレ

月生あひめ
·
公開:2026/3/8

 狸小路のシアターキノで「死の天使 ヨーゼフ・メンゲレ」見てきた。

 ヨーゼフ・メンゲレは、ナチスの時代、悪名高いアウシュヴィッツ収容所でユダヤ人の骨格標本を作るために解剖したり、人体実験をした医師である。

 メンゲレの偽名の章題で、過去(ナチス時代または逃亡時代)と未来(晩年時代)を順番に繰り返しながら、彼の生涯を追っていくストーリー構成。

 双子を縫い合わせるなど外道博士とはいえ、当時はユダヤ人を人間の姿をした動物みたいに非人間化するのが当たり前だった。

 メンゲレはいたって善意と科学への貢献として行っていた。ユダヤ人を解剖しても、彼にしてはただモルモットを解剖しているようなものだろう。私も戦争犯罪の本をよく読むが、非人間化とはそれぐらい人間の倫理観をいとも簡単に麻痺させる。

 メンゲレに悪意はなかった。彼はただ命じられて仕事をこなしていただけ。それなのに戦後に戦争犯罪者としてどこまでも追われ、逃げ続ける人生を送る。

 メンゲレの息子も父が戦争犯罪者という理由で偽パスポートがないと入国できない(1970年代になっても)、妻のイレーネとマルタ、匿っていた農場の家族も非難される。メンゲレに関わった者は、みんな不幸になる。

 全く救いのない映画。

 「私は無実だ!」「他の医師も極悪非道なことをしていたのになぜ私だけが追い詰められるのか!」というメンゲレじいじの叫びが胸に突き刺さる。メンゲレを非難するのは簡単である。だが彼の背後には、ナチスという果てしない深闇が複雑に広がっている⋯⋯。

 ラスト辺りで愛犬ツィガーノを可愛がるメンゲレ。冷酷非道と世間から非難された彼にも、息子や動物を可愛がる心はあるということが示される。

 息子に薬とイチゴジャムを買ってきてくれと頼むメンゲレじいじが少し可愛かった(*^^*)

 戦争犯罪の責任は誰にあるのか、この映画の鑑賞を期に今一度考え直したい。

@tukui_ahime
いつも映画ばかり見ている字書きの日記。漫画、小説、映画レビューもたまに。 個人サイト『レアムーン』→tukui-ahime.pinoko.jp/wordpress