2025/4/1 第3回 台湾の同人イベント

ツツリ/壱真
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公開:2025/3/31

待っっってました!やっと来ましたね、趣味関連のお便りが…!

最近好きなイベント主催スタジオが復活してて、この質問はタイムリーでちょっと嬉しくなっちゃいます〜

早速今回いただいた質問を見てみましょう!↓

ほーこれもまた語るとすっごい長くなる大きいテーマなんですね。

ざっくりまとめると、

・台湾の同人事情

・イベント開催状況

・海外からのイベント参加と注意点

・イベント向け用語

の4点が挙げられたので、今回は台湾の同人イベントについて軸にこの順で逐一紹介していこう思います。

一つ大事な前提なんですが、ツツリは「中国イベントの参加経験皆無」なのでせいぜい台湾イベントの情報しかお届けできなくてすみません…🥲

あと、同じ中華圏だとしても海を隔てているので台湾と中国の同人文化と生態は「ほぼ別物」と言っても過言ではありません、ここ地味に大事なんです…!

なので中国の同人事情は記事のボリュームと読みやすさを考慮した上今回は残念ながらノータッチになりますが、その代わりできるだけ私の把握している台湾の同人事情色々をお届けします。とはいえ日本でのイベント参加経験も一般参加1回しかなかったので、もし私が「だいたい日本と同じ」と書い部分に「え?!」になったところがあったらぜひ教えてくださーーい!😭

それでは行きましょう!


【台湾の同人事情】

  • そもそも台湾の同人文化ってどんな感じ?

    一言で言うと、「日本とほぼ同じ」です!

    同人誌印刷、グッズ制作を承る印刷所さんや小型工場があり、年に2、3回くらい企業主催の大型イベント、他には小型スタジオや個人主催のオンリー数々…

    規模こそ日本には及ばないが、大まかの流れとノウハウはほぼ同じで、台湾の同人文化はずっと日本先輩の背中を見て育ってきた感じです。主催によってかなり毛色が違うイベントもありますが、日本での生態のミニバージョン…と想像してみると大体合ってます。

  • 毛色が違うイベント?

    例えば一番古株の主催企業『開拓動漫事業有限公司』の「Fancy Frontier*」では、有名声優やアニメ、ゲーム関連歌手をゲストとして迎え、イベント最終日(二日目)の最後で声優トークやミュージックライブをイベントの締めにしています。

    それから個人開催の小型オンリーではメインジャンルとなった作品にちなんだミニゲーム、クイズ大会…などが定番で、それだけでなく、開催会場の配置自体にすごく力を入れるイベントもありました。

    以前とあるカップリングのオンリーイベント開催会場はまさかの披露宴用会場で、入り口で披露宴風の案内看板があって、ステージの上で新郎新婦となった推しカプ二人の等身大パネルが立たされ、一番すごかったのは会場にはビュッフェもあった…など、何もかも披露宴っぽくした風変わりなイベントは当時話題になりました。当時の参加者の写真付きレポート記事を見つけたので、興味があったら読んでみると面白いかもしれません。

    *Fancy Frontier、通称FF。現存する一番古株の主催企業で、開催規模も一番大きい。現在サークル参加、一般参加両方とも参加者の性別は男性が圧倒的に多いため、ほぼ男性向け。

    *披露宴風カップリングオンリーイベントのレポート記事↓

    https://www.plurk.com/p/pf3zlv

【イベント開催状況】

男性向けのFF、女性向けのCWT、そして第三勢力

「全国は3つの勢力圏に分かれた」のネットミームごとし、台湾の同人イベント勢力図もちょっとそんな感じです。

「男性向けのFF」 ジャンル:総合イベント

まずはFF、『開拓動漫事業有限公司』の、名前通り企業主催のイベントから軽く紹介しましょう。(「公司」は会社という意味で、「有限公司」はつまり有限会社のこと)

開催場所は台北市、サークル数によって規模は大型、小型二種類に分かれています。大型はFancy Frontier、通称FF。FFは台湾最大規模を誇る企業主催総合イベントで、最終日に声優トークやミュージックライブなどをやるのもこっち。夏、冬に開催。小型のPetit Frontier(通称PF)は、春、秋それぞれ1回の頻度で開催されています。あとさっきも言及しましたが、開拓動漫企業のイベントはFF/PF両方とも概ね男性向けです。

「女性向けのCWT」 ジャンル:総合イベント

正式名称はComic World Taiwan、こちらは『同人誌數位有限公司』主催の総合イベントの通称で、同じく企業主催です。開催規模で命名するFF系統と違って、CWT系統は開催場所によって台北のCWT、台中のCWT-T、高雄のCWT-Kに分かれています。台北のCWTはFFと同じ夏/冬2回開催で、参加サークルと参加者の傾向はどっちも女性向けジャンルが圧倒的に多くて、FFと対となる存在とも言えます。

ところが、台北CWTはFFの次に規模が大きいイベントですが、契約上の理由で開催場所は台湾大学総合体育館というスポーツアリーナを「永久開催会場」とします。ですが台湾のオタク文化と人口はこの十数年間劇的に成長し、参加者数は昔と比べにならない規模になってて、会場となったアリーナはとっくにキャパオーバー状態で、正直いうと快適とは言えません…そんな中、第三勢力が活躍しています。

「第三勢力」

第三勢力の数々のイベントは上記の二つの企業が主催するイベントと比べて規模こそ比較的に小さくて、主にスタジオや個人主催となりますが、中にはCWTよりもずっと古株のイベントもあります。日本のY⚪︎Uスタジオや赤BUー主催のような、総合イベントの中にまたオンリー、プチオンリーを内包するシステム、小さいスタジオや個人開催のオンリーもツツリの中では第三勢力になります。

  • 「ICE」→「NiCE」ジャンル:総合イベント

    個人的に第三勢力の新たなスターとして推したいのは、このかつてはスタジオ『星石文創』による「ICE」、全称In Comic Energyという総合イベントです。ICEは2022年5月のイベントで最終開催になりましたが、なんと今年2025の夏!かのスタジオが企業に進化して帰ってきました!

    現在は「NiCE」、創·迴響Neo iComic Echoという名前で、八月の大型イベントに向けて鋭意準備中です。会場の広さ、サークルスペースの大きさ、会場の配置、スタッフの練度と親切度は個人的にこちらがダントツ一番です。

  • 「GJ」ジャンル:総合イベント

    スタジオ『GJ工作室』による台中のみで開催する総合イベント「GJ」、台湾中南部の古のオタク達はこっちを実家とすることが多い。近年は西洋作品(洋画、洋ゲー、洋ドラなど)をメインジャンルにするオタクに人気な「欧米作品オンリー」もこのスタジオ主催です。

  • 「オリジナル作品オンリー」

    いわゆる日本のコミティア的なイベントですが、現在はコミティアのように決まった名前と開催時期があるわけでなく、企業がそれぞれのオリジナル作品オンリーを開催するのが多いです。あとオリジナル作品は性質上一般受けが良くて、地方政府が主催するイベントも偶にあります。

他にも色々あるんですが、全て詳しいってわけじゃないので割愛します…あしからず…!

総合イベント内のオンリーについて

開催数が比較的に少ないイメージですが、増えつつあります!私自身は参加したことがないんですが、経験者によると「GJスタジオ」が主催する「IF創集繪」は日本の赤BUー主催イベントに近い開催形式になっているそうです。あと「星石文創」による新イベント「NiCE」もプチオンリー開催申請可能になっている様子。

個人主催のジャンルオンリーやカプオンリーもかなりの数があって、即売会パートだけでなく、クイズゲーム、スタンプラリー、コスプレ演劇…など文化祭のような活動で賑やかです(会場自体も学校の体育館を借りることが多い)。

それから『連攤』

会場内オンリーって規模じゃないんですが、『連攤』というものがあります。『攤』は『攤位(サークルスペース)』の略称で、これは「サークルスペースを繋げる」という意味で、SNSで有志個人が「同ジャンル/同カプ/同テーマの皆さん、『連攤』しませんか?」と召集するのが一般的で、それから企画、連絡なども有志個人がしています。15サークルくらいの小規模であれば特にイベント主催側に別途申請する必要はなく、各サークルが『連攤』申請期間内に『連攤』希望のお隣さんのサークル名、スペースを記入するだけで良いです。

さっきも書きましたが、正式的申請をする必要はないので特定のテーマ、ジャンルがなくても全然大丈夫。昔は同じ会社の同僚だけで一列を埋める『連攤』に参加したことがあって、ちょっと楽しかったです。

【日本のイベントと違う部分、そして注意点】

一般参加の場合

  • ほとんどのイベントは入場券必須、事前に購入しましょう

    台湾ではほぼ全てのイベントは入場券必須なので、目当てのイベントの入場券の販売場所/形式を調べてから購入するのがおすすめです。イベント開催当日でももちろん購入できますが、販売窓口近辺はだいたい混雑しちゃいますので、できれば事前に入場券の購入を済ませましょう。

    他のはだいたい日本と同じですね、イベントによって入場券の形式は電子チケット、コンビニで購入/発券できる紙チケット(いわゆるローソンのLoppiを使うようなやつ)、カタログ付き紙チケット…など。個人開催の小規模オンリーの場合は、記念グッズ付き券などもあって、その場合は前売り券のみになるのが多い。

サークル参加の場合

  • 「小精靈」こと売り子や手伝いさんはできれば連れてきましょう

    お隣さんが知り合いじゃない限り、スペース内に常に一人がいる状態にするのがおすすめです。台湾は間違いなく治安が良い方でお節介な民族性(個人的感想だけど、ちょっと大阪っぽいところはあります)ではありますが、問題は会場の混雑度は日本のイベントより高いです。混雑時のハプニングやトラブル回避のために、スペースを留守にしなきゃいけない時お互いカバーし合える相手を連れて一緒に参加しましょう。

    ちなみにこの「小精靈」はつまり「妖精さん」のことで、売り子やお手伝いさんの愛称です。有能な「小精靈」は上位存在の「精靈王」と呼ばれることもあります。🧚🧝‍♂️

  • 無修正天国という噂

    しばしば「台湾では無修正同人誌を頒布できる」という噂を耳にしてますが、現時点はっきり言えるのは「各イベントにそれぞれの規制ルールがあって、それに従う必要がある」、というのが事実です。モザイクや黒ノリの規則は日本よりだいぶ、かな〜りゆるいのも事実です。ですが税関に引っかかる可能性もあるので、海外から持ち込まない方が妥当でしょう。

    20年前くらいのことでしたが、テレビ局の記者が参加者のフリをして会場に潜入し、同人イベントに悪印象を持つよう内容が偏った報道をして、ちょっとした問題になった事例があったので、成人向け作品頒布の実際の状況について詳しく知りたい場合は別途でツツリにこっそり聞いてください。

  • 前日搬入の可否はイベントによる

    イベントによりますが、台湾現地で配送業者経由の前日搬入なら可能なイベントもあります。事前に調べておきましょう。

コスプレについて

日本と違ってだいたいの場合は事前申請不要です。注意すべき点は更衣室の配置や整備、そして空間の大きさは日本のように完備でないため、それを把握した上でまいりましょう。

他のはだいたい日本と同じで大丈夫なんじゃないかなーと思います。

【イベント向け用語】

さてお待ちかねの用語紹介です!使われる頻度が一番高い基本的な単語をいくつかピックアップしました。

  • イベント→『場次』(チャン ツィー)

    イベント自体を指す単語、「場」と略す場合も多いです。例えば「4月のイベント」は「4月場」と略されます。

  • オンリー→『翁里』、『翁哩』、『翁』

    「オンリー」の発音から取った当て字で、「翁里」、「翁哩」の読み方はオンリーと同じです。「翁」は略称でオンリーの「オン」の部分ですが、前にそのオンリーのジャンル名を冠するのが一般的な使い方です。例えば「ポケモンオンリー」の場合は、「寶可夢翁」になります。

  • 同人誌→『本』(ベン)

    同人誌のことは漢字をそのまま使って同人誌(トン レン ジー)と呼びますが、正式的呼称なイメージがあって親しみがそんなにないので、だいたい『本』と呼ばれています。その他もだいたい日本と同じで、例えばメイド本は「女僕本」になります。

    新刊と既刊など、最初から漢字だった単語はそのまま『新刊』(シン カン)、『既刊』(ジー カン)使われています。

  • サークル→『社團』(シャー トゥアン)

    サークルを示す単語。会場マップ、公式サイトの説明、会話などで「社團入場」は「社入」と略されることも多い。

  • サークルスペース→『攤位』(タン ウェイ)

    会話で『攤』一文字と略されることもあります。例えば「私のサークルスペース」は「我的攤」になります。

  • サークル主→『攤主』(タン ジュー)

    『攤位』の主、すなわち『攤主』。「攤主在嗎?」(タン ジュー ザイ マー?)と言われたら、それは「サークル主はいますか?」と聞くフレーズです。

  • 入場券→『入場券』(ルー チャン チュアン)、『門票』(メン ピャオ)

    紙タイプ、電子タイプ問わず何かしらの入場券、チケットは通称『門票』です。入り口の門をくぐるための小さい紙切れ。サークル参加証、サークル入場証の場合は『社團參加證』(シャー トゥアン ツァン ジャー ジェン)、『社團入場證』(シャー トゥアン ルー チャン ジェン)。

  • グッズ→『周邊』(ジョー ベン)

    『周邊』(ジョー ベン)はグッズ全般を指す単語です。中には:

    ・アクリル〇〇→『壓克力』(ヤー カー リー)〇〇

    ・スタンド→『立牌』(リー パイ)

    ・キーホルダー→『鑰匙圈』(ヤオ シー チュアン)

    ・ストラップ→『吊飾』(ディアオ シー)

    ・ポストカード→『明信片』(ミン シン ピェン)

    など、色々があります。

    上記は最近よく見かける種類です。

  • 〇〇セット→『套組』(タオ ズー)

    新刊セットやグッズセットなど、セットで頒布する場合はこの『套組』で呼びます。『新刊套組』はつまり新刊セットのこと。

他にも色々ありますが、記事が長くなりすぎそうな予感がするので、本編はひとまずここまでにします!

補足ですが、今回の記事で見つけた「合わせて読んでみると良いかも!」記事はこちらになります↓

  • 台湾の即売会Q&A

    FF常連の日本サークルさんによる記事です。2014年の十年前以上の記事で、現在の状況と相違する点はありますが、すごく参考価値と読みがいのある記事でおすすめです。

  • 台湾の同人誌即売会 CWT68 一般参加記録|なご

    CWTに一般参加した方の記事。台湾のイベントに遊びに行くのはどんな感じなのか、アクセスについて簡単な情報も書かれています。

今回の台湾の同人イベントについての内容はいかがでしたか。

台湾のイベントといえど、同人文化のノウハウ自体は日本発なので大まかの流れはだいたい同じです。とはいえ各イベントにそれぞれの個性と規則があって、参加したいイベントをまず決めて、それからイベント公式サイトで色々確認しながら準備すると良いのしょう。

もしフォロワーは台湾イベントへの参加に興味がありましたら、ツツリのサークル参加経験はそこそこあって相談役として力になれると思いますので、需要があったら気軽に連絡してくださいね〜

読んでくださってありがとうございました!謝謝🫶❤️

次回でまたお会いしましょう〜!

@tututu
台湾在住台湾人🇹🇼。バイリンガルってレベルではないのですが、ジャパン文化に浸りすぎて思考の6割が日本語で残り4割が母語の元日系会社ゲームデザイナー。せっかくの言語力なので、何か新しいことを試してみようと思います。