愛の数(創作BL)

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 起床後顔を洗った時に気づく。顔面を埋めたタオルが真新しく、ふわりと柔らかく濡れた皮膚を包み込み、ほのかに心地の良い香りが漂っていること。

 出来て間もないことを告げる、食卓に並ぶ湯気の立つ朝食と、お代わりが沢山出来るよう作られた汁物。どんなに疲れていようと必ず作ってくれる夕食や夜食。

 ネガティブが留まることを知らず、情けなさや申し訳なさから溢れる涙をすくう指先と、常に淹れ直される温かい飲み物。思考に詰まった際に与えられる冷静な助言。気落ちしていたり、緊迫したタイミングを見計らって出されるちょっかいや悪戯。

 増えていく家電。口にした料理の記憶。キスの数。いったいどれほどの感謝を告げ、男と時間を共有すれば報いることが出来るのだろう。思い詰め悩んだ末に一生の時間を捧げると告げれば「自分の人生を軽んじるな」と諭され、ただ傍にいることを望まれる。

 味見と称し、好物(あい)を口に運ばれながら、静かに一滴の涙をこぼし、男の手を握った。茶化しもせずバカにもせず、静かに手を握り返し、絡めてくる指先の温度を感じながらどんな時でも思い知らされる。

 ああ、まったくどうやったって、霧雨のように優しく、そして静かに確実に、蝕むように、全身をおかすように愛を降り注ぐこの男に甘やかされてばかりで、もはや逃げることも抗うことすらできず、ただただ受け入れて無条件に愛されるしかないのだと。