良薬口に甘し

.
·

 良薬口に苦しとはいえど、粉薬が喉にはりつく嫌悪感は未だに慣れない。飲みにくさに苛立ちながらも無理やり湯で不快感ごと流し込めば、唐突に唇を塞がれ、まあるい飴を口移しで与えられる。

 かろり、口の中でとろけるはりんご味。唐突に与えられた蜜の味にきょとりと目を丸めれば、頬を優しく撫ぜられて。

「ご褒美だ」

 そう言う男の瞳は慈愛に細められ、よく出来ましたと呟かれた言葉と共に重ねられた二度目の唇は、砂糖菓子より甘かった。