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 囚われた。その始まりを覚えていない。

 世界に囚われた。己の中で気づけば勝手に生まれてくる創作欲に魅了され、それらを表現したいと笑い、怒り、苦しみ、嘆き、悲しむようになった。ただ消費するだけの存在であればなにも悩むことなどなかったのに、自ら茨に足を踏み入れた。流れる血すら養分にしてやろうと、貪欲になり己の首にかけた縄すら操るようになった。

 人という存在に囚われた。閲覧数、評価、ブックマーク、反応、感想、関わり。他者と関わることでの欲求は留まることをしらない。一時期は心が乾きすぎて、他者からの言葉が欲しくてたまらない怪物になりさえもした。

 最初は楽しくて書きたかっただけ。己の内側から込み上げてくる、どうしようもない欲望、脳にあふれかえる情景、きこえてくるうた、胸を突き破る言葉。それらを表現したかっただけ。

 結局のところ、ああしたいだとか、こうしたい、美しくありたいだとか、他者を意識している時点で、表現したい世界は曇りを帯び始める。無理に着飾り、よく見せようとした世界はたいていろくでもないことにしかならない。

 どうか、裸足で野を駆けまわる自由と踏みしめた草の感触を忘れてしまわぬように。いつだって誰の眼も気にせず、自分が描きたい世界をかく。地雷も傷も配慮しない傲慢な正義を貫く狂った心を持ち続けるしかない。愚か者なのだ。結局のところは。空を仰ぎ、また書けなくなるのではないかもしれないと怯えながら、息をするように文字を吐き続ける。どれだけいびつであろうと、ぎこちなかろうと、うたうように世界を描く。