ストレスを感じると人って呼吸が浅くなるんだって。
息ができなくなって震えているときそんなことを思い出す。
私の心臓から、浅く出入りする空気と一緒に何か大きなものが出てこようとする。横隔膜が震えながら怪物を押し上げている。
まぶたの裏に見える光の名残。目を開けばのっぺりと面になっていく景色。吹き出る汗はきっと怪物の出産に伴うものだ。冷たくなる指先の血液は心臓に届く。心臓が力む。怪物は今にも口から産まれようとしている。
怪物はきっと「助けて」「苦しい」と産声を上げるだろう。産まれた怪物を私はきっと持て余してまた口に放り込む。重く味のしない空気と一緒に飲み込んでしまうのだ。それなら産んでしまわない方がマシ。
私の震える心臓に閉じ込められた怪物は、ずっと泣いている。