Individual Contributor(IC)。響きは良いが要は一般社員のことだ。語感がきゃりーぱみゅぱみゅみたいだなと思いタイトルを平仮名にしてみたらだいぶ痛い感じになってしまった。まぁいいや。色々と試していこう。
ソフトウェアエンジニアの世界ではキャリアパスのひとつとしてICが話題になるのを見かける。生涯現役、プレイヤーとしてエンジニアリングをやっていく。優れた製品を生み出す上では優秀なプレイヤーが必要不可欠だ。技術領域のスペシャリストが演奏者として存在し、演奏者を束ねる指揮者がいて、オーケストラのように価値を生み出していく。というのは机上の空論かもしれないが、他の職種と比べて個人で価値を出せる幅が大きいからこそ成立するのだと思う。
私はエンジニアではなく、人事をやっている。一応チームを持ってはいるが、ICに近い働き方をしている。プレイヤーとして制度企画もやるし、Opsもやる。会議はそれなりにあるけれど、経営と現場の間で毎日何かしら手を動かしている。この働き方が気に入っているし、この先もICとしてのキャリアを歩んでいきたいと考えている。
やりたいことは山ほどあるし、何ならもう着手している。今やっていることは自社のためであるが、きっと将来的に多くの日本企業に還元できる取り組みだと信じている。自分の強みも発揮できているし、上司は私が自由に動けるように全力でサポートしてくれている。同僚とも良い影響を与え合っている。働き方だって、子育てをしながら仕事にも打ち込めている。学びの時間を持つこともできている。ありがたい限りだ。
しかし正直なところ不安な気持ちもある。今の立場でやっていくことはできそうだが、せっかくなら高みを目指していきたい。職位を上げるとなると人事部長と同格のポジションを狙うことになる。しかし社内には前例もなければロールモデルもいない。社外にそうしたポジションがあるのかすら分からない。一体私はどのようにキャリアプランを描けば良いのだろうか。
以前、同僚に何気なくキャリアの相談をしたことがある。私がこういう風に貢献していきたいんだよねと言うと、同僚は「それって会社にとっては外部のコンサルタントを使わなくてもよくなるってことですよね」と言った。人事制度や施策の支援でコンサルタントに入ってもらうと結構な金額が動くので、たしかに会社から見たメリットとしては分かりやすい。一方で何かしっくりこないな、とも思ったが、うまく言語化できなかった。
もっと社外に情報を取りにいくべきだとも思う。やろうと思えばSNSを使って人に会いに行くこともできるだろうし、知り合いの伝手を頼ることもできる。副業してみるという手もある。インプットが不足しているからモヤモヤしてしまうのだ。さっさと色んな人に会いにいって、考えを確かめてみればいい。その一歩がなかなか踏み出せないのは、時間を作れないからではなく、無自覚な恐れがあるからなのかもしれない。
よくよく考えると、別にICにこだわることもないのかもしれない。チームを持っても良いし、プロジェクトを動かすのも嫌いではない。ただ、やっぱり自分の手を動かしていたいなと思う。ソフトウェアと同じで、素晴らしい体験をつくるには上流の設計だけでなく細部の作り込みが必要不可欠だし、作って終わりではなく運用を改善し続けてこそだ。プレイングマネージャーという形も無理ではないが、周りを見ていても限界はある。後進育成においても純粋なプレイヤーとしてのロールモデルがいることで組織全体のレベルを底上げできると思う。
加えて、私は人事の仕事のやり方をより良い形にアップデートしていきたい。日々変化する環境下で継続的に価値を生み出すためには、相応の方法論がある。それがどういうことかを同僚に言葉で説明するだけでなく、仕事そのものを通じて伝えたいのだ。そのためにも、やはり手を動かし続け、マインドとスキルを少しずつ組織に根付かせていこうと思う。
えーと私は何に不安になっていたのだっけ。そうか、キャリアだった。つくづくキャリアのことを考えるのは難しい。やれやれだ。けれど、私は私のやりたいことをもう知っている。危ぶむなかれ、危ぶめば道はなし。 踏み出せばその一足がみちとなり、その一足が道となる。