AIが将棋やチェスで人間に勝つようになっても、それが競技者を失業させることはなかった。なぜなら、AIが勝つのは自動車が徒歩よりも速く走れるのと同じように、当然のことだからだ。自動車があるからといって、100メートル走という競技がなくなるわけではない。人々は一見、将棋やチェスでは勝者を決めることだけに価値があると思っているが、実際には勝敗が決定するまでのプロセスを楽しんでいる。より詳細には、対戦相手がいることによって生じる思考のプロセスを楽しんでいる。別の視点では、たとえばVTuberが五目並べなどでど下手なプレイをして人気を博すのも同様で、人々は思考のプロセスを楽しんでいる。これが、AIが競技者を失業させない理由である。もし将棋やチェスから競技者が失われるとしたら、それはAIの進化ではなく、単純に将棋やチェスよりも人々を魅了する盤上ゲームが出てくることによる。