どこで目にしたのか忘れたのだが、「音楽は本質的に反体制的」という言説を読んだことがある。この場合の「体制」とは実際の政府だけを指すのではなく、もっと広範な意味で、それまの歴史で形作られた規範――当たり前だと思われている物事――を指すのだという。言葉もなく、絵もない、音だけのメディアという性質は、人間の感覚だけに訴えるため、反体制的にならざるを得ないのだという。
現在、ディズニーの『蒸気船ウィリー』の著作権が切れたことにより、この作品を元にしたホラー作品の制作が有志によってなされている。この話でウヒロが思ったのは、ホラーもまた、音楽と同じく反体制的なのではないかということだ。ホラー作品、殺人、グロテスク、恐怖といったものを取り扱う。それは社会の道徳的規範に真っ向から逆らうため、必然的に反体制になる。
反体制的作品は、規範に対して精神的な依存をしている人間を不愉快にするが、これまでの「当たり前」を見直すことにより、創造的な人間に対しては良い刺激になる。このため、音楽やホラーは、時には多くの人から眉をひそめられつつも、文化のなかで生き残り続けるだろう。