映画館が微妙に距離があって勿体ないので一人で映画を観る時はなるべくハシゴするようにしてる。昔は大型シアター、ミニシアターと一日三本よくハシゴしてたけど最近したら集中力よりおしりが痛くなってしまい身体の衰えを痛感した。もっと近くにあったら気軽に行けるのになぁ。
という訳でカラオケ行こ!と哀れなるものたちを観てきました。
どちらもすごく面白かったです。細かく感想言いたいので書きます。
・カラオケ行こ
原作は読んでいて他の和山先生の作品も大好きでファンです。ツイッターの評判からかなり期待していて確かに良かった。良かったんだけど、私の好きな箇所がカットされてしまっていて見たかった所が見れなかった消化不良だったのもある…実写にあたって未成年と成人男性の距離やヤクザの描き方などファンタジーから現実に落とし込む際のセンシティブな部分への配慮も感じたし原作への劇中内の言葉を引用すると「愛がこもってる」のもしっかり受け取った。
なんだけど、個人的な感想として邦画っぽさというのか感情的すぎる印象を受けた。
和山先生の作品はローテンションで淡々とシュールな事を言う、感情のない表情から愛嬌を感じると思っていてギャグのノリが思っていたのと少し違った。
例えば狂児が紅だー!と叫ぶシーン。映画では叫ぶ声にビックリしていて急に紅と絶叫するというのが笑いのポイントになっているが原作では叫ぶ狂児に反して前奏42秒で逃げられたなぁと冷めた目で静観してるのが笑いのポイントでこういった和山先生が描く抑揚が薄いクスッと笑えるポイントのズレを感じてしまった。土下座シーンももっとスっとやると思ってたら案外重かった。中学生相手に塾で講師もスルーだったの勿体ないな…(でもこれは実写で言葉にするのはアウトなのかも)
ノリでいえば勇者ヨシヒコ的なシュールさかもしれないがアレはちょっとギャグすぎるので違うかも。漫画は自分のノリと間で読めるけど映像にした時喋り方や間、効果音テンションなど違うとギャグが一気につまんなくなるのですごく難しい。
中学生の付き合ってる付き合ってない口論の青春描写もらしくないと思ってしまった。青春すぎるというか感情的すぎるんだと思う。だから紅の歌詞を本編に結びつけ愛を説くのもちょっとクサすぎる。聡実くんは狂児の良い所をご飯沢山頼んでも怒らないしか思いつかなかったんだから前奏42秒の余韻ぐらいが丁度いい。
鎮魂歌のシーンも歌い終える前に狂児を見せてしまったのでえ!そこで!?とびっくりした。ここだけでもモノローグ入れても良かったんじゃないかな〜と多分私の原作で好きなポイントをカットされてしまったので物足りなさを感じてるんだと思う。
映画岸辺露伴でも、前世を振り返るシーンで掘り下げは素晴らしいがこれを荒木飛呂彦がやるか?と考えたら多分NOな気がしてらしくなさを受けてしまった。
実写に落とし込んだ時私が考えてるより違うものになるからこの形にしてるのもあるだろうし(映画としての尺やボリュームもあるんだろうな)私が和山先生の世界観を求めすぎたせいで物足りなさを感じてるんだと思う。普通に実写化としては素晴らしく人にオススメできる出来だし皆の歌唱が聴けただけで実写化した価値がある。
だから面白かったし映画として100点なの!好みポイントが少し低かっただけ!綾野剛も大好きだし良かったんだけどやっぱあの濃い顔でお茶目な事言う狂児も見たかったな…という気持ちもある。
・哀れなるものたち
先に謝っておくとこちらの方が褒めちぎってます、すみません。他下げ他上げでは決してありません…
上映予告とTLでの評判のみの情報で観に行ったんだけど度肝を抜かれた。すごい。すごすぎる。後から聖なる鹿殺しと女王陛下のお気に入りの同監督だったのを知り好みど真ん中だったのが納得。どちらも大好きな映画。
前置きとしてR18+なので臓器や性器の描写セックスシーンがめちゃくちゃある。気軽に人にオススメはできない。それでもとにかく素晴らしかった…
鮮やかな青のシーンから始まりモノクロの世界へとなる。魚眼レンズの歪んだ画面の中に幼い言動の成人女性と身体と頭を別の生き物で繋がれた動物が不協和音の音楽と相まってとにかく不気味。ずっとゾワゾワする。でも背景、服飾がとにかく美しい。エマストーンも美しい。そして演技がすごい…幼児の理性が働いてない行動がリアルで誰も制止しないのも怖かった。
性的欲求への興味は人間の欲望、自由への表現なのだろうか。外へ出たい(駆け落ちする)とゴッドにちゃんと話すのも良かった。最初こそベラを縛りつけようとしてた男達も最後にはベラを自由にしててそうじゃない男達は制裁を受ける。哀れなるもの。
望んだ外の世界はとんでもファンタジー煌びやかで美しい。女性たちがドレスとまとって歩く中ベラはずっと脚を見せている。解放へのメッセージだと思う。ベラを所有物にできず怒り狂うダンカン(ラファロおじさん良かったなぁ)特に本を読み始めたベラが言葉と知識を覚えていく中で子供のように喋る昔の君が好きだった!と本を海に投げ捨てるシーンが印象に残ってる。女に知識は要らないと直球で言われて傷ついた。
マーサとハリーの会話が全部良い。マーサはベラの自由奔放な話題を受け入れて諭していく、ハリーの言葉は全部書き留めたいぐらいだ。文字通り全てを体験して自分の人生を見つけていくベラが格好良くて美しいし売女として生きてきたベラに対し他の男に嫉妬はすると答えたマックスが思慮深い。
娼婦館の所も良かったなぁ。性をカジュアルに消化しててこういう振り切り方があってもいいと思う。笑ってしまう所もありながら経験して学び自分で生きている。
男の有害さが描かれていたが現実問題として立ち塞がり権力、暴力の抑圧。それを痛快に解決するラストが天晴れでまさに怪作じゃないかな。この監督が作る映画は後味の苦味がじわ〜と残るのも好き。
話が進むに連れ画面がクリアになっていったり場面転換の挟まる絵もオシャレでエンドロールまで抜かりない。私もパフスリーブを着たくなった。141分あっという間で面白かったなぁ…落ち着いてもう一回観たい。
パンフレット買うの我慢しちゃったんだけど今度まだあったら買おうかな…かなり自分好みで本当に良かったです。
カラオケ行こを観たら炒飯食べたくなった。
自我載せても許されますか。
今年のファーストバイのブーツやっと下ろせた🥾 歩きやすくて可愛い。