大晦日の朝から元旦の朝にかけての24時間シフトは壮絶だった。90人近い患者の9割は初診で、初診申込書を記入させる必要があり、全員から保険証の写しを取る必要があり、それらを来た順番で受付して待合室に誘導しなければならなかった。それと帰る患者には金を預かったり、タクシー会社の電話番号を教えたり、最寄りの薬局の営業状況を案内したりということも並行してやりつつ「今日やってる?」とか「年明けはいつからいつも通りの診療体制になるの?」とか「次の◯◯先生の診察日いつ?」みたいな電話にも対応していた。人は追い込まれると自分が思ってる以上に滑らかに動くのだなと思った。
そんな24時間を終えて家に帰り、恋人が作ってくれていたご飯に舌鼓を打ってグンニャリしていたら地震が来た。気持ち悪い横揺れが長く続く、嫌な地震だった。反射的に震源地と地震の規模を確認する。震源地は石川のあたりで、どうやら震度6強を観測した場所もあるらしい。津波が間も無く到達する地域もあるという。「よりによって元旦からエラいことになったな」と思った。
幸い、僕は石川という土地に些か親しみを感じていはするが親しい友人や血縁者はおらず、精々「あそこの美術館に収蔵されている鴨井玲の絵が被害を受けなければいいのだけれど」くらいの心配事しかない。率直に言って他人事でまだ良かったと思った。そして他人事なので過度に情報を集めるのはやめようと思い、この日はそこからあまりTwitterを開いたりせずにすごした。野次馬根性を満たして気持ちを不安にする行為にあまり意味はない。
それから風呂に入り、早めに寝て起きて、現在は二日の朝にこれを書いている。これから三日の朝まで再び24時間働く。どこかで何かがあっても、我々の生活はただ続く。良いも悪いもなく、続く以上は働いて賃金を維持する必要がある。クソサミいなと思いながらコーヒーを飲んで朝の薬をのんで、ウンコも済ませた。ノロノロ着替えたら出勤の時間だ。