『いばらごはん』あとがき

梅もなかの倉庫
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公開:2024/11/4

9/22に頒布した『いばらごはん』のあとがきです。

あんスタを好きになって、まさか自分が本を出すことになるとは思っていませんでした。その理由が、長編を書くのが苦手だったからです。3000字~5000字の短編を書くのは得意だけど、10000字以上の長編は書けない。でも同人誌にするなら10000字以上が必要だと思っていました。ですが、長編の字数と同じくらい短編をまとめれば本になるのではないかと気づき、そこから本のコンセプトと構成がとんとんと決まっていきました。3月頃に構成を決めて、7月頃には本文を書き終えています。

全体的にほんわかした雰囲気の本にしたかったので、本の装丁は絵本のようにしたいと考えました。表紙のイラストはてんぱるさんの素材(https://booth.pm/ja/items/4004740)をお借りしました。タイトルのフォントはじゃずキッサ(https://booth.pm/ja/items/260289)です。表紙がご飯を食べる前で「いただきます」、裏表紙がご飯を食べた後で「ごちそうさま」のイメージです。水彩画タッチのイラストなので、表紙の用紙はマーメイドスノーホワイト153kgにしました。実際に水彩画に使われている紙なので、水彩画っぽい雰囲気になったかなと思っています。

以下、本のネタバレを含むので、これから本を読む方は読了後に読んでください。

あくまで書き手視点の話なので、本を読まれた方と解釈が異なる場合もあると思います。ですが解釈に正解はなく、読んだ方が感じたことが全てだと思っているので、気にしないでください。

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この本のテーマは「茨が凪砂くんのためにいろいろなご飯を作る本」なのですが、これとは別に裏テーマがあります。裏テーマは、最初は茨が凪砂くんのためにご飯を作っていたけれど、最後は二人で一緒にご飯を作る、です。凪砂くんが茨のためにご飯を作る、ではなく、茨と凪砂くんが一緒にご飯を作る、がポイントです。

『ねぎ塩豚バラチャーハン』

この話では、料理を作ることは非特待生(アイドルのお世話をする役割の人)がやるべきだと思っていた茨が、凪砂くんのために料理を作ろうとする、という話です。凪砂くんがきっかけで茨が今までの自分の考えを少し変えて、そのことで凪砂くんとの関係も少し変わる、起承転結の起の話です。

秀越学園のシステムを確認するためにオータムライブを読み返していたのですが、ストーリーが面白くて原稿そっちのけで読んでいました。現在軸のAdamも好きですが、この頃の余所余所しく、会話が噛み合わないAdamも好きです。

『鮭とほうれん草のクリームパスタ』

茨のご飯を食べたくて、茨に嘘をついてご飯を作ってもらう凪砂くんの話です。側から見れば凪砂くんが茨のことを好きなのは分かりやすいのに、茨は鈍感で凪砂くんからの好意に気づいていない、という構図が好きです。

この話のお気に入りポイントは、パスタを食べていた凪砂くんの唇にホワイトソースがついて、それを舌で舐めとる様子を凝視している茨です。凪砂くんの仕草が色っぽく見えるような描写を目指しました。

『はちみつがけホットケーキ』

この話では、喧嘩するまではいかないけど考えの相違で意見がぶつかり、それに折り合いをつける、ということを書こうと思いました。「丸くおさまる」が裏テーマで、丸い→ホットケーキ、を連想しました。Adamは本気の喧嘩はなかなかなしないけれど、お互いの意見の相違でぶつかることはよくありそうだと思います。そしてその時に、ほぼ確実に茨が妥協するだろうとも思います。それが私の中で、BLを書く上での凪砂くんと茨のどちらが受けで、どちらか攻めなのかという価値観に反映されています。私の中では、ぶつかった時に最終的に相手の意見を受け入れる方が受け、押し通す方が攻めです。

茨のAランクボイスの仕事の話題「自分かドラマの主役を……?閣下を差し置いて自分が主役を演じるなんて、畏れ多い」から、茨にお芝居の仕事が来た話にしました。

『秋の味覚弁当』

凪茨の話なのに、凪砂くんは出てきません。お弁当を作っている茨と、仕事に行く前の創くんが会話しているだけの話です。書き終えて読み返したら、R&Rの茨とジュンくんの構図と同じことに気づいたのですが、せっかく書いたのでこのまま載せました。

お気に入りポイントは二つあって、栗ご飯を作っている茨と、アンパンマンポテトをお弁当に入れる茨です。栗ご飯は茨のアイドルストーリー『食の楽園』で凪砂くんが栗ご飯を食べていたので書きました。

『トマトとチキンのスパイスカレー』

スパイスカレーは作るのに時間がかかるけど、工程自体はあまり難しくないので、二人で作る料理にちょうどいいのではと思って選びました。凪砂くんは自分が茨にご飯を作ってもらったから自分も作りたいと思っている一方、茨は自分の役割が無くなれば凪砂くんの隣にいる意味がなくなるからご飯作りの役割を凪砂くんに渡したくないと思っていて、そこから一歩関係性が進む二人を書きました。

茨はおそらく両利きだと思うのですが、道具を使うときは主に左手を使っているので、凪砂くんに包丁の使い方を教える時に戸惑いそうだと思います。

『関東風お雑煮』

凪砂くんも茨も、家族が家に全員揃って食卓を囲むような年末年始を過ごしたことがない、ということから考えて書いた話です。茨は家族がいないですし、幼少期の凪砂くんも、巴家では家族団欒ではなく大勢の人を招いてパーティーをしていそうなイメージがあったので。

お気に入りポイントは、お雑煮に入れるお餅を関東風の角餅にするか、関西風の丸餅にするかという二人の会話です。年末年始を二人で過ごすなら、メニューはクリスマスケーキでも年越しそばでもいいと思ったのですが、角餅と丸餅の会話を入れたかったのでお雑煮にしました。