※この記事は以前別の場所で公開していた日記を再掲しています。
先日、東京都庭園美術館の『あかり、ともるとき』展に行ってきた。
東京都庭園美術館は、皇族朝香宮家の自邸を美術館として保存している施設だ。建てられたのは戦前。当時フランスに留学していた朝香宮家の鳩彦王が、フランスの建築装飾に魅了されて、帰国後に日本のフランスのデザイナー、職人に依頼して自邸を建設した。
アール・デコの影響が強くあるものの、同時に日本らしさも感じられる美しい建築だった。空間の隅々までまだ細かい装飾が施されていて、窓から差し込む光まで計算されていた。ここで暮らしていた人たちは、どのようなことを考えていたのだろう。どんな暮らしをしていたのだろう。古い建築に触れる度に、そう考えてしまう。
今回の展示は、建物の照明器具にスポットライトをあてて紹介している。各部屋ごとに全て異なる照明器具が使われていて、そのどれもが特注品だ。ガラスで作られたシャンデリア、子ども部屋のカラフルなステンドグラス、果物を彷彿とさせる球がいくつも連なっているライト。部屋のコンセプトに合わせて作られた数々の照明器具を見ていると、家主の家づくりに対する情熱を想像する。
この建築が作られた後、世の中は戦争に突入する。海外に留学することも、時間とお金をかけて家を設計することもできなくなる。まさに、あのタイミングだったからこそ完成できた建築だ。それが現在も残っていることのありがたみを噛み締めていた。