小説『白鳥とコウモリ』東野圭吾
面白かった。ミステリーの展開にはあまり新鮮味を感じられなかったけど、その分キャラクターの心情描写がしっかりしていて良かった。上下巻でページ数は多いものの、上巻のラストからぐっと展開に引き込まれて、下巻のラストまでするすると読めた。実際にある場所が舞台になっているから、読んだ後に門前仲町について調べたし、映画のロケ地マップが公開されていることを知って、いつか行ってみたいと思った。
小説『三月の招待状』角田光代
平成の連ドラのような空気感の小説だった。この小説も登場人物の描写がしっかりしていて、出てくる人数は多いのにするすると読めた。途中まではストーリーにはまれなかったけれど、遙香が語り手の章を過ぎてから解像度が上がった。学生の頃にクラスの中心でわちゃわちゃしていた人たちを遠巻きに見ていた自分のことを思い出した。確かにああいう人たちって今でも頻繁に同窓会のように集まっているなあと思う。社会人になっても顔を合わせればあの頃と同じノリで話せる一方で、それぞれが大人になるに過程で少しずつ関係性にずれが生じて、学生の頃と同じように話せない瞬間の対比の描き方が面白かった。
小説『家族じまい』桜木紫乃
知人が面白かったと言っていたので読んでみたのだけど、感動するよりも先に、結局父親が諸悪の根源じゃないか、という感想が真っ先に浮かんだ。女性が逞しく生きる様子を描いた良い小説なのだと思うけれど、女性陣が逞しくなった経緯を考えると、やっぱり父親が全て悪い。女性陣の中で唯一登美子だけは、自分で子どもを産んでおきながら、未成年の娘たちを後回しにして自分を優先して生きるのはだめだろうと思ってしまった。こういう感想しか出てこない自分の価値観の狭さと心の余裕のなさを実感させられた。
小説『おちくぼ姫』田辺聖子
日本の昔話(古典文学)だからだと思うのだけど、童話の王道ストーリーで、良いことをした人が報われて、悪いことをした人にはそれ相応の結末が待っている話だった。帯には日本版のシンデレラと書いてあったが、自分は昔話版のスカッとジャパンだと思った。阿漕と帯刀のキャラクターが魅力的で、個人的にはこの二人が動くシーンが全編通して面白かった。古典に馴染みがない人にも分かりやすいように、所々で解説が入っていたのも良かった。
展示『眼のごちそう 食器』サントリー美術館
とっても面白い展示だった。食器は単体で芸術品として楽しむことと、料理を引き立てるというふたつの目的があり、それぞれの目的の良さを感じられる展示だった。菊の花の形の器と、魚の形の器が特に可愛かった。自炊するようになってから器にも興味を持ち始めたので、この器にはどんな料理が合うだろうと考えながら見るのが楽しかった。器に描かれたモチーフにはそれぞれ思いが込められていて、そのほとんどが健康長寿と子宝繁栄で、普遍的な人間にとっての幸せはいつの時代も変わらないのだと思い、少しだけ複雑な気持ちになった。

展示『TOPコレクション 明日の食卓』東京都写真美術館
食をテーマにした写真の展示で、見る前は家族の食卓の写真が展示されているのかと思ったけれど、実際に行ってみるとそれだけではなく、家の冷蔵庫の写真や、農業や漁業に関する写真、捨てられたゴミを漁る野生動物の写真など、食に関する様々な視点の写真があって面白かった。食べることが生きることに結びついていることを実感した。原美樹子さんの柘榴の写真の質感が特に好きだと思った。別フロアの展示の「おんなのさくひん」も見たのだけど、こっちは刺激が強くて、よぼよぼのメンタルでは受け止めきれなくて逃げるように出てきてしまった。

写真美術館に併設されているカフェでパフェを食べたのだけど、とっても美味しかった。パッションフルーツのパフェ。
