2月8日

ウメヤ
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 黒帯会議「アーネスト解散」の最終話を見た。やるべきことからの逃避でなんとなくつけたのに目が離せなくなって困った。

https://youtu.be/Q5192imb7as?si=JeC0FMWgKZ76AoFp

 大阪吉本の中堅漫才コンビ・アーネストの解散直後、仲の良かった後輩の黒帯が取り仕切り、周囲の反応と解散の経緯をまとめて、食い違うふたりを繋ぎ納得のいく終わり方を模索した一連の動画の最終回。

 気持ちを見せてくれ、頭じゃなくて感情で話してくれ、と問われて言葉が出てこないアーネスト門野さんの姿に自分を見いだしてしまった。固定のiphoneで撮られた、画面の奥に小さく映った顔でも、その口がキュッとひき結ばれ顎から喉にかけて皮膚が突っ張っているのがわかる。アーネスト(パーフェクト・ダブル・シュレッダー)のことはほぼ知らない。ネタもほとんど、平場に至っては一切見たことはない。なのでここからは自分を投影しただけの話です。

 門野さんは感情をぶつけられても感情で応えられない。「確かにそうやな」としか言えない。「奥さんもいるのに稼ぐところまでもっていけなかったのは(ネタを書く側として)申し訳なかった」と言うが、それは主に社会的な判断から出てきた言葉であって彼の感情から生まれた言葉ではないような気がした。おそらく彼は社会的な価値観・判断と自分の気持ちを混同してしまっていて、区別できていない。自分の感情を受け入れて表現する訓練をしてきていない。だから感情ではなく論理を発してしまう。主観に対して客観で返してしまうから話は噛み合わず、スイングしない。

 それでも彼の表情からは、噛み合っていない状態、求められていることを返せていない状態に違和感を感じている様子が見てとれた。きっと彼の内側は混乱していただろう。要求通り自分は思ったことを言葉にしているつもりなのに、でも確かに何かが噛み合っていない、反応も悪い、でも気持ちを聞かせてと言われてもどうすればいいかわからない、と。言葉が出てこず、黙ってしまうから周りの芸人が間を埋めていく。そうして何かが違うという空気のまま動画は進んでいった。

 何かがずれていることは感じ取れていても、言葉にできない。反応できない。ものすごくよくわかる。勝手な投影だが、勝手な投影だからこそ、あばらの周りの肉がぐっと硬くなって疼く。

 会話が停滞してきた終盤、てらうちが両手を頭の上で組んで「ちょっともうちょっとだけ門野さんの気持ち聞きたいです俺は」と言い出し、ああこの人は、門野さんが結局感情を出していないことに気付いたんだ、逃がさないよう動いたんだ、と思ってすこしじんときてしまった。空気に流されず踏みとどまって、待ってくれあなたの気持ちを聞きたいと言ってくれる友人がいる。それだけで門野さんが偏屈でも周りから好かれていることがわかって、羨ましいと思った。

@umeya
日記を書いています。 過去日記(2023.10.1〜12.25) umeya.notepin.co